第74章 継子美月の罠〜時透無一郎 冨岡義勇 【R強】
無一郎は、震えるゆきを優しく抱きしめた。
「美月は僕の継子で、確かに剣士としては優秀だよ。でも、それはそれ。君が誰かと比べられて、君の価値が下がるなんてことは絶対にないんだ。」
無一郎の静かな声が、シンと静まり返った部屋に響く。
彼はゆきの頬を伝った涙を親指でそっと拭うと、少し困ったように笑った。
「…そんなに泣かれると、僕まで胸が苦しくなる。冨岡さんは言葉が足りないだけだよ。君を傷つけようとしたわけじゃない。ただ、事実を言っただけ。でも、それが今の君には一番痛いことも、あの人は気づいてないんだね。」
ゆきは無一郎の胸に顔を埋め、しゃくり上げた。
自分には才能がない。美月のように、誰かに手放しで褒められるような強さもない。
そんな劣等感が、義勇の言葉で溢れ出してしまったのだ。
今日だって、自分がもたもたしていて義勇さんとはぐれてしまったし…
義勇さんの継子として、失格なんだ。
「いい?ゆき。僕は、鬼を斬る君も、こうして僕の隣で泣いちゃう君も、全部ひっくるめて『君』だから好きなんだ。美月がどれだけ強くても、僕の隣にいてほしいのは、美月じゃなくて君なんだよ。」
「無一郎く…ん…」
無一郎は、ゆきの頭を優しく撫でた。
「美月の怪我が気になるから僕は、行くね。それとさっき…無理に君に迫ってごめん…反省してる。もし怖い思いさせていたら本当にごめんなさい。」
そう言い残し無一郎くんも、美月さんの元へ行ってしまった。
私は、泣いてしまったのと無一郎くんの言葉にほっとしたのか…いつの間にか眠ってしまっていた。
静かな藤の家…
ふすまが開く音がした。
そっと起こさぬように、義勇が入ってきた。
時透が、布団に寝かせたのではないのか?畳の上で寝てるじゃないか?
それに…?涙の跡…?
泣いたのか? なぜ? 俺が美月を手当手のために連れて部屋を出た後に時透に何かされたのか?
義勇は、ゆっくりとうつ伏せで眠っていたゆきを抱きあげた。
思わず首筋を、調べた…跡はないな…
震える手で隊服の詰めをはずし一つ目のボタンをはずした…
鎖骨あたりにも跡はない…
泣き腫らした目…どういう事だ?
「んっ…」
ゆきが、起きそうになったので義勇は慌てて布団に寝かせてあげた。