第74章 継子美月の罠〜時透無一郎 冨岡義勇 【R強】
義勇は、声もかけず勢いよくふすまを開いた。
そこには、壁にもたれて無一郎が座りその隣で無一郎の肩に頭を預けて眠るゆきの姿があった。
「煩いなぁ…ゆきが起きるじゃない?」
「す、すまない…」
義勇は、二人はもしかして…と思い急いで走ってきたので拍子抜けした。
「時透ありがとう。ゆきを連れていく」
ゆきの元に来ようとする義勇からゆきを守るように、無一郎が隣で眠るゆきを抱きしめた。
「いや。今夜はここで眠らせる。」
無一郎は、義勇に素っ気なく告げた。
「お前は、この部屋を継子と使うんだろう?ゆきは、場違いだから連れていく」
「美月は、冨岡さんと部屋使えばいいよ。」
「お前正気か?なに馬鹿なことを言っているんだ?」
その時、義勇の背後から足を引きずった美月が顔を覗かせていた。
「美月!?足どうしたの?」
無一郎が、思わず立ち上がった拍子に、ゆきの体が畳へ倒れそうになった。
無一郎は咄嗟に彼女を支えたが、その視線は美月の包帯に釘付けだった。
「鬼を斬った後にちょっと足を滑らせて怪我してしまい…だけど水柱様がここまで連れてきてくれました。」
義勇は、足を引きずる美月に手を貸しながら「お前の継子は、すごい。状況の判断力に優れており決して怯まず鬼に、真っ向に挑む太刀筋も見事だった。将来有望だ。すでに戦力にもなっている。」
義勇の褒め言葉に、美月は照れながら笑った。
その時無一郎は、自分を頼るように袖を掴むゆきの微かな震えを察した。
「…そうだね。美月は強いよ」
無一郎はあえて淡々と、義勇に答えた。
「冨岡さん、僕もゆきを布団に寝かせたら行くから先に美月の手当してあげてくれないかな?ゆきは、冨岡さんに返すから、美月の手当終わったらこの部屋使えばいいから…」
「…わかった」
義勇を追い出すと、無一郎は腕の中のゆきに顔を寄せた。
「…もう、下手くそだなぁ。起きてるんでしょ?」
優しく、耳元で囁く。ゆきは、ゆっくり目を開いた。
「涙いっぱい溜めて…。美月を褒める冨岡さんが嫌だったの?自分と比べられていると感じたの?」
無一郎のその言葉に、ゆっくり頷いた。
「そっか…」
「君は君だよ。」