第73章 君を取り返すために〜冨岡義勇 時透無一郎
美月の言葉が響き渡った。
「ゆきさんが無一郎様に言い寄っていた」という嘘。
しのぶさんの歪められた報告と、美月の追い打ち。
義勇はその場で凍りついたように動けず、ただ絶望の表情を浮かべてをゆき見つめていた。
しかしその沈黙を破ったのは意外な人物のゆっくりした声だった。
「いい加減にしてくれないかな」
無一郎が、一歩前へ踏み出した。
その瞳は美月を真っ直ぐに見ていた…恐ろしいほど冷たく。
「言い寄っていた? 嘘を吐くのも大概にしてよ。昨日のことは僕が一番よく分かっている。すがり付いていたのは、僕の方だ」
その言葉に、美月の顔から笑みが消えた。
しのぶも、わずかに顔が引きつる
「美月、君が何を見たのか知らないけど、これ以上彼女を侮辱するなら…僕にも考えがあるよ」
無一郎はそう言い放つと、今度は義勇に睨むような視線を向けた。
「それから、冨岡さん。胡蝶さんの言葉を真に受けて、勝手に絶望しないでくれる? 彼女を不安にさせているのは、他でもないあなたのその動揺だと思うよ」
「時透、お前…」
義勇の声が震える…。
無一郎はゆきの隣に歩み寄ると、義勇に見せつけるように、肩を抱き寄せた。
「ゆきは僕のものだったし、今も、これからだってそうだ。昨日だって…僕が無理やりゆきを離さなかっただけだよ。冨岡さんに彼女を守る覚悟がないなら、今すぐ僕に返してよ。僕のゆきだから!」
その光景を見た義勇に嫉妬心が芽生えた…。
いつも冷静で、感情を押し殺してきた義勇が震える声で言う。
「離せ、時透」
義勇はゆきの腕を掴み、無一郎の手から引き剥がすように自分の方へと引き寄せた。
「こいつが誰のものか、決めるのはお前じゃない。お前こそこいつを信じれなかったくせ偉そうに!ゆきは俺のものだ!」
しのぶの冷めた視線、美月の動揺…
そして無一郎のゆきを取り返したい強い気持ち。
「何言ってるの?ゆきはただの継子でしょ?それに前にお願いしましたよね?ゆきに近づかないでって」
「今はもう婚約者ではないだろう?」
「だけど元々は僕達は愛し合っていた!」
「それなら、俺もだ…」
「と、とにかく諦めてよ冨岡さん」