第73章 君を取り返すために〜冨岡義勇 時透無一郎
翌朝、私は義勇さんと共に再び蝶屋敷を訪れた、診察室の前で待っていると、奥からしのぶさんが姿を現した。
その表情には、どこか試すような色が見える。
義勇さんは至って真面目な顔で「胡蝶、昨日は不在だったようだが、今日は診察を頼めるか」と切り出した。
しのぶさんは私をチラッと見たあと、義勇さんに向かって、わざとらしくため息をついて見せ
「あら、冨岡さん。そんなに心配しなくても、体は元気だと思いますよ。昨日もね…診察室の寝具の上であんな事…」
不穏な言い回しに、心臓が音を立てる。
義勇さんが不思議そうに「どういう意味だ?」と尋ねた
しのぶさんは待っていましたと言わんばかりに、言葉を重ねる…。
「昨日、私が屋敷に戻ると、診察室の寝具で時透君が彼女を組み敷いていたんです。それはもう、二人だけの世界という様子で。冨岡さん、ここは一度身を引いて、二人を元の鞘に戻してあげるのが、本当の『優しさ』だと思いませんか?」
「組み、敷く…?」
義勇さんの顔から血の気が引いていくのが分かった。
しのぶさんの話は、ただ情事の最中であったかのように捻じ曲げられていたから…
「胡蝶、それは本当か。時透と…」
義勇さんの声が震えている。
かつて無一郎くんから「汚い」と心ない言葉を投げつけられ、絶望の中で婚約解消を申し出た私。
だが、今の状態はもう二人はわだかまりも消え元の鞘に収まりたいように感じられてしまう。
それに、ゆきは知らないが二人と関係を持ったと嘘の話を無一郎に吹き込んだのは、実はしのぶだった。
「し、しのぶさん、違います! あれは無一郎くんが…!」
私が慌てて否定しようとしたその時、背後から声が聞こえた。。
「…何の話をしてるの?」
振り返ると、そこには無一郎が立っていた。
冷めた表情で、しのぶを見ている。
「あらあら…時透くん…今日は診察はありませんよ?」
「美月が、傷が痛むと言うので連れてきたんです」
無一郎の後ろから、にこっと、屈託のない笑顔を美月は見せてきて口を開いた。
「昨日私も見ました!ゆきさんが無一郎様に言い寄っていたところを…無一郎様困っていました…そこでゆきさんが抱きついていて、驚きましたよ!」
「そ、そんな違います!」
ゆきは、必死に否定した。