第73章 君を取り返すために〜冨岡義勇 時透無一郎
「諦めない!お前とゆきは婚約は終わっている。だから遠慮しないと決めているんだ」
義勇は、そう言って強引にゆきの手を引いた。
「帰るぞ。胡蝶、診察はもういい」
無一郎は、義勇の前に素早く移動して道を塞いだ。そして手を引かれているゆきを真剣な眼差しで見つめた。
「僕は絶対に君を取り返すから…待っててね…」
ゆきの鼓動は高鳴った…。そんな二人を引き離すように義勇は、腕を引き診察室を後にした。
帰り道一言も話さず歩き続けている…義勇さんの歩幅が大きいし速いしついていくのにやっとだった…。
「あ、あの…義勇さんっ…もう少しゆっくり…」
自分の速さに気づいた義勇が、慌てて立ち止まった。
「すまない…」
義勇は、ゆっくりとゆきの方に振り向き少し不安そうな表情でじっと見つめてきた。
「ゆき…さきほど時透に言った言葉…遠慮しないと。聞いていただろう?」
「は、はい…」
「俺はお前に遠慮しない。それを、わかってほしい」
ゆきは、一歩後ろに足を引いて、義勇の握る腕を優しく解いた…。
「義勇さんは…しのぶさんと良い仲ではないのですか?」
義勇が、はっとした表情をした。
「いや、あれは違う…」
「くちづけしている所も見たし、抱き合っているところも見ました。」
「違うんだ…」
義勇は、真剣な眼差しで否定する
「義勇さんは、好きでもない方とくちづけしたり抱き合ったりするんですか?」
ゆき違うんだ…あれはお前を忘れようとしたために…胡蝶に協力してもらったんだ…それをゆきに伝えようか迷った…
忘れるために胡蝶を利用した事を知られるのも怖かった…
「無理しないでください。私が色々あって可哀想に思っているんですよね…私は大丈夫です!」
お前は、そう言って俺の先を歩いて行った…。髪飾りも大切に俺が持っていたのに…この気持ちに気付いてくれないのか?
鈍感なのかわざとわからないふりをしているのか…。
お前の後ろ姿は桜並木の中とても綺麗だった。桜色の俺が贈った羽織がとても可愛くお前を包む…
心なしか足が弾んでいるように見えた…なぜなら
時透にお前が言われた「僕は絶対に君を取り返すから…待っててね…」その言葉をお前は、期待しているかのようだったから。