第73章 君を取り返すために〜冨岡義勇 時透無一郎
「無一郎くんやめてよ!離してっ」
必死に嫌がる声は、かつての親密さを思い出させる響きで懐かしかった。
無一郎は、突き放そうとするその抵抗すら愛おしげに目を細め、さらに深く覆い被さる。
「その呼び方、やっぱりいい。もっと呼んでよ」
無一郎の指先が肌をなぞる熱に、
ゆきが戸惑いで身を震わせたその時―。
「…何をしているんですか。」
仕切りの影から現れたのは、無一郎の継子である美月だった。
美月は軽蔑の色を隠そうともせず、ベッドの上で乱れた様子の二人を見据えている。
「無一郎様、離れてください。この方は…自分から婚約を解消しておきながら、こうして身体の関係を求めるような方なんですよ」
美月は信じられないものを見るかのように溜息をつき、ゆきへ冷ややかな視線を向けた。
「水柱様に風柱様…柱の二人をあんなに夢中にさせておきながら、今度は無一郎様までたぶらかすなんて。不潔で汚らわしい…。風柱様たちとも、もう済ませているのでしょう? そんな身体でよく平気な顔ができますね?汚い…」
悪気など微塵も感じさせない、残酷なまでの無垢な笑顔で言い放つ美月。
その言葉の刃がゆきを切り裂こうとした瞬間、空気が凍りついた。
「黙れ」
無一郎の低い声。
無一郎はゆきを背中に隠すようにして立ち上がり、美月を冷めた瞳で見下ろした。
「美月、君にゆきを侮辱する権利なんてない。今すぐ消えて。二度とゆきにそんな口効かないで」
「え…? でも、無一郎様、私はただ…」
「聞こえなかった? 次にゆきを汚いと言ったら…継子でも容赦しないよ」
ふと無一郎は、ゆきに目を向けた。身体が小刻みに震えていた。
「…汚い…私は」
無一郎が、優しくゆきを抱き締めた。
「汚くなんてないよ…僕はちゃんとわかったから。だからもう一度…婚約者になってよ…ゆき」
ゆきは、無一郎の胸の中からすり抜ける…。
「か、帰らないと…義勇さんが心配するから…」
「待って!」無一郎がゆきの手首を掴んだ
「お館様に言うから婚約解消は無かった事にしてくださいって。僕が子供だったんだ!ちゃんと君に話も聞かず他人の話に耳を傾けてしまった。」