第73章 君を取り返すために〜冨岡義勇 時透無一郎
次の日いつものようにゆきが目覚めると隣には義勇が、まだ寝息を立てて眠っていた。
私が、無一郎くんとの婚約解消をして、鬼殺隊の寮に入ろうとした時に、辞めさせてこの屋敷に連れてきたくれた義勇さん…あの日から一人にさせるのは不安だと毎日隣に寝てるけど…
夜中に溜め息をつき何度も布団から出て行っている事を私は知っている。
以前…お互い好き合っていた頃は毎日抱かれていた時もあった。
今は一線を越えてはこない…
私は一人で大丈夫だし…もう一緒に寝るのは終わりにした方がいい…今日言おう。
‐‐‐‐
そして…
夕食時、ゆきは箸を置くと、視線を落としたまま切り出した。
「義勇さん…今夜から別の部屋で寝ようと思います。もう一人で平気ですから」
義勇さんの手が微かに震え、重苦しい沈黙が流れる。
「不満があるのか?」
「いえ、義勇さんが夜中に何度も部屋を出て行くのを知っているから。私のせいで眠れないのは申し訳なくて…」
これ以上一緒にいれば、また以前のように体を求められる。そう予感して怖くなった私の言葉を、義勇さんは静かに遮った。
「…隣にお前がいて、恥ずかしいのだが…抱くのを我慢するのが限界だった。熱くなった体を冷やしに外へ出ていただけだ」
真実を告げる義勇の声は、ひどく切なく響いた。
「で、では尚更一緒は、辞めましょう…。」
「もう時透の婚約者ではなくなっただろう?」
「そ、そうですが…」
「ずっと前にお前が池に入ってずぶ濡れになった日を覚えているか?」
《第60章消えゆく愛‐参照》
「あの時に俺を好きだとお前は言った…」
「…あ、あの時は…」
そう、とても好きだった…好きで堪らなかった…だけど義勇さんに避けられ…無一郎くんは婚約者で…そして私を大切にしてくれて…忘れないといけないと思い、思いは薄れていった…
だけど今こんな事になって、また義勇さんにすぐとはなれない…。
だからわかってほしい…。
「ゆき…では、明日から別の部屋で休むことにしよう。今夜が最後だ…今夜は一緒でもいいか?」
すごく真剣な目で私を見つめてくる…断れない…。
「はい…」
義勇は、ホッとした表情に変わった。けれど熱い視線が胸を締め付ける…
私も少し笑みを浮かべた…