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鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎、冨岡義勇★R18

第72章 真実〜冨岡義勇


翌日。産屋敷邸に足を踏み入れたゆきの足取りは、鉛のように重かった。

​「大丈夫だ。俺の側にいろ」

​義勇の低く穏やかな声に背中を押され、ようやく顔を上げる。

しかし、視界に飛び込んできた光景に、ゆきの心臓は大きく音を立てる。

​木陰で談笑する一団の中に、あの無一郎がいた。

もう婚約者ではない…無一郎くん…少し背が伸びたかな?

​「無一郎様、お疲れじゃないですか? ほら、お茶をどうぞ」

​美月が無一郎に寄り添い、親密な笑みを浮かべている。

その姿は、誰の目から見ても仲睦まじい師範と継子ではなく、恋人同士そのものだった。
 
無一郎は拒むことなく、ただぼんやりと彼女を見つめている。

かつてゆきだけに向けられたはずの穏やかな時間は、今、別の誰かのものになっていた。

​「…」

​ゆきは反射的に視線を逸らした。胸の奥が焼けるように熱く、同時に凍りついていく。


​その時、無一郎の視線がふいにこちらを捉えた。 

​一瞬、無一郎の瞳が大きく揺れる。

無一郎は美月の手を振り払い、一歩、こちらへ足を踏み出そうとする。

​「ゆき……!」

​無一郎の声が届く。

けれど、その言葉が紡がれるより早く、義勇が静かにゆきの肩を抱き寄せ、自らの背に隠した。

​「行くぞ。お館様がお目見えになる」

​義勇の大きな掌の温もりが、震える肩に伝わる。

無一郎の手は、ゆきに手を伸ばしたまま止まった。

​何も言えず立ち尽くす無一郎。

​ゆきは、溢れそうになる涙を堪え、振り返ることなく歩き出した。

無一郎くんは、私に関わらないほうがいい…隣にいるその人を大切にしてあげて…


「ゆき俺は会議に出る。お前は、部屋で待つか?」

「いえ…中庭の鯉を見るのが好きなんです。もう春で桜も満開だし…中庭に居ます。」

「そうか…春だが外はまだ冷える。寒くなったら屋敷の中で、待たせてもらえ。会議が終わったら迎えに行く。」

義勇は、産屋敷邸の中へと入って行った。

中庭の桜は、綺麗に満開の花をつけていた。

私はここのお庭が大好きだった…鯉を眺めながらまだ無一郎くんの継子だった頃は、無一郎くんが会議が終わるのをここで待っていた…。



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