第86章 無一郎と美月の秘密【R18】
「君…すごい粘着質だね。まだゆきに付きまとうの?」
男が驚愕して手を緩めた隙に、ゆきはその場にへたり込んだ。
視線の先には、無一郎の姿があった。
「は、柱…! 霞柱様、聞いてください!前にも話しましたが、 この女は最終選別すら受けていない紛い物だ! 柱の皆さんに色目を使って、特別扱いを受けて…!こんなやつ除隊させてください!」
男は、自らの正当性を証明しようと必死に言葉を募らせた。
ゆきを貶める言葉の数々は、彼自身の劣等感そのものであったが、男はそれに気づいていない…。
無一郎は表情ひとつ変えず、その見苦しい言い分を一通り聞き終えると、短く吐き捨てた。
「…だから?」
拍子抜けするほど淡白な問いに、男が言葉に詰まる。
無一郎は一歩、また一歩と間合いを詰め、男をじっと睨んだ。
「君は、ただゆきを妬んでいるだけ。ゆきは、好かれるべき人にちゃんと好かれている。僕も好きだし、君の言う水柱だって…
他の隊士にも、彼女を友人として大切に思っている人はたくさんいる。」
無一郎は、乱暴に掴まれていたゆきの手首に目を向け、その痛々しい赤みに気付くと腸が煮えくり返りそうになった。
「確かに、君のように彼女を嫌う人間もいるだろうね。でも、それはほんの一握りだ。好意的な人の方が圧倒的に多い。それは、ゆきが君にはない魅力を持っているからだよ」
「そんなはずはない! こいつはただの腰抜けで…何もできない!体を売るだけの女だ!」
「黙って。君のやっていることは、ただの醜い虐めだ」
静かな声だがあきらかに無一郎の怒りを感じる…。
「君は、自分の歪んだ意見を相手に押し付けているだけ
、これ以上ゆきに触れるなら、次は言葉だけじゃ済まさないよ。周りが誰も賛同しないから一人なんだよね…君は?早く消えて」
死を予感させるほどの気迫に、男は観念したようで腰を抜かしながら逃げ出した。
やっと静かに戻った道端で、無一郎はゆきの元に歩み寄り、そっと手を差し伸べた。
「怖かったね。帰ろうか、僕の屋敷へ」
その手の温もりが、今のゆきには心強く感じた。
数々の言葉に…無一郎に感謝しかなかった…
ありがとう…
そんなゆきを無一郎は優しく抱きしめ背中をトントンした