第71章 新しい継子〜時透無一郎 冨岡義勇
「…こないで、お願い、触らないで…!」
床にうずくまり、自らの体を掻きむしるゆき。
「そう言うのやめてよね。」
無一郎が戸惑いながらもゆきにもっと深く触れようとした時…
「ゆき!」
その声が届いた瞬間、背後にいた無一郎は、空気の重さが一変したのを感じた。
現れたのは、義勇だった。
彼は、驚き振り返った無一郎をゆきから無理矢理剥がした。
「あっ…! 嫌、こないで…っお願い」
怯え、逃げようとするゆきの細い肩。
義勇は躊躇しない…。
膝をつくと、暴れるゆきの体を、大きな羽織ごと包み込むように強く、深く抱きしめた。
「離して! 汚い、私は汚れてるの…っ!」
「汚れていない」
耳元で響く、低く、揺るぎない声。
ゆきは義勇の胸の中で激しく抵抗したが、義勇はびくともしない。
それどころか、ゆきが自分自身を傷つけないよう、その震える手を大きな掌で優しく包み込んだ。
「お前は汚くない。俺が見たお前は、いつだって誰よりも気高く、清らかだ」
「でも、無一郎くんが…っ」
「時透の本心ではない」
義勇はさらに力を込め、ゆきの耳元に唇を寄せた。
その体温が、凍りついたゆきの心を溶かすように伝わっていく。
「山賊の時も、今も、お前を守りきれなかった俺の不足だ。お前が自分を責める必要はない。すまなかった、ゆき…」
何なの?ゆき…いったい何を僕は、知らないの?
「山賊、山賊って何?血鬼術で男の人が怖くなったんじゃないの?胡蝶さんにそう聞いたけど…体を怪我してたのは崖から鬼に落とされたって…」
無一郎の問いに、義勇は答えづらかった…
震えるゆきを強く抱きしめた後口を開いた。
「隠していたわけではない。ただ、お前が背負う必要のない真実だ」
隠蔽されていたのは、鬼の仕業などという単純な悲劇ではなかった。
「無一郎くん…」
恐怖に濁るゆきの瞳を見た瞬間、無一郎は悟る。
自分の無自覚な言動が、ゆきが忘れたがっていた忌まわしい記憶の傷口を、無理やり広げてしまったのだと。
「冨岡さん教えてよ…ゆきに何があったの?何でこんなに怯えているの?」