第71章 新しい継子〜時透無一郎 冨岡義勇
「無一郎くん、もういいの。聞かないで…」
消えそうな声で拒絶するゆきを、義勇は何も言わず抱きしめ続けていた。
無一郎が口を開こうとしたその時…
「無一郎様! こんなところにいたんですか」
現れたのは美月だった。三週間前に継子になったばかりの彼女は、その場に漂う空気など読まぬように、ひまわりのような笑顔で無一郎に駆け寄る。
「美月、外で待ってて」
「えっ、どうして? 産屋敷邸からずっと追い掛けて来たんですよ。酷いです」
美月は無垢な瞳で、義勇の腕の中で震えるゆきに気付いた。
そして怯えるゆきに淡々と言い放った。
「あれ?冨岡様?なぜお二人は、抱き合って…あっ!不死川様や冨岡様と『そういうこと』されてますものね。そんな仲ですよね…無一郎様早く行きましょう。お二人の邪魔になります」
「ち、違うんです…」ゆきが力なく答える
「何が違うのですか?私は、無一郎様のために自分を磨く努力をしています。自分を汚すような真似なんて、私には理解できません」
美月の言葉がゆきの心をえぐる。
「時透この継子を黙らせろ!」
義勇が、氷のように冷たい声で無一郎に怒鳴った。
義勇はゆきを自らの羽織で包み込み、美月から遮断するように強く抱き上げた。
「行くぞ、ゆき。俺の屋敷へ」
「冨岡さん、待って…!」
無一郎の声が響く
追いかけようとする彼の袖を、美月が「行きましょう」と優しく引いた。
義勇は一度も振り返らず、ゆきを連れて去っていく。
「冨岡さん!待ってよ!」
義勇は、歩みを止めた。
「もう婚約者ではないんだろう?遠慮をするのを辞める。お前には側に可愛らしい継子がいるじゃないか。早く一緒に屋敷に帰れ…ゆきに構うな!」
「ま、まだ僕は婚約解消を認めてない!」
「今までお館様に申し入れすれば婚約解消出来ていたのにゆきは、お前が勝手に決めた婚約に同意はしていなかったが自らお館様に訴えることはしなかった。だが、今は、自らお館様に申し出た婚約解消を…。本当に婚約解消を望んだからだ…察しろ」
無一郎はその場から動けなくなった…。
まさか…こんな事になるなんて…
抱きかかえられて連れて行かれるゆきを見つめるしかできなかった。