• テキストサイズ

鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎、冨岡義勇★R18

第71章 新しい継子〜時透無一郎 冨岡義勇


「稽古の邪魔だ。耳まで悪くなったの?」
無一郎は振り返りもせず、隣に立つ継子の美月の頭を優しく撫でた。

憧れの師範の仕草に、美月は頬を上気させる。

​その視線の先には、震える手で重箱を差し出すゆきの姿があった。

「無一郎くん、これ…一生懸命作ったの。ふろふき大根、一口だけでも…」

「いらない。美月、捨てといて」

​無一郎は冷酷に言い放つ。

困惑する美月を余所に、彼はわざとらしく彼女の肩を抱き寄せた。

「美月は僕だけを信じてくれる。他の男のところへふらふら行くような人が作ったものなんて、口にしたくないんだ。…誰かさんみたいに、僕を裏切ったりしないよね?」

「はい! 精一杯努めます!」

​美月の純粋な返答を確認すると、無一郎はゆきへ一歩歩み寄り、力任せに重箱を奪い取った。

そして中身を確かめることもせず、縁側の泥土の上へ無造作に放り投げた。

「あっ…!」

​重箱が転がり、真っ白な大根が泥にまみれて散らばる。

それは、ゆきが朝早くから彼の喜ぶ顔を想像し、指先を凍らせながら作ったものだった…。

「これで満足? 君の顔を見てると稽古の邪魔なんだ。二度と現れないで」

「む、無一郎く…ん…」

​切り裂かれた心から涙が溢れ出し、ゆきは泣きながらその場を走り去った…去り際にいつもの甘い香りがした…

​  「無一郎様…よろしかったのですか?」

美月の不安げな問いに、無一郎はパッと手を離した。

その顔には先ほどまでの「優しい師範」の面影はなく、暗い影が落ちている。

「うるさい。今日はもう終わりだ。下がって」

​一人残された無一郎は、泥にまみれた重箱をじっと見つめていた。脳裏に焼き付いて離れないのは、絶望に染まったゆきの瞳…そして甘い香り…

しかし、彼の心を黒く塗りつぶしていたのは、あまりに醜い嫉妬だった。

​「…だって、胡蝶さんが…。君が冨岡さんと不死川さんと、毎晩のように通じてるって。そんなの、許せるわけないじゃないか。僕だけを見ていたと信じていたのに…。」

​無一郎は泥だらけの地面に膝をつきそして、ゆきが心を込めて作ったはずの、今は汚れてしまった大根を、震える手で拾い上げた。

よくわからない感情が湧く…その時背後に美月の姿があった…無一郎は、思わず振り向き彼女を抱き締めた…
/ 644ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp