第71章 新しい継子〜時透無一郎 冨岡義勇
柱合会議の行われる日まで無一郎は毎日、私を膝に乗せ、髪を撫でて過ごした。
けれど、柱合会議が行われた日以来、その日常はぷつりと途絶えた。
継子の指導で忙しいのか、それとも事後の任務が重なっているのか。あんなに毎日通い詰めていた無一郎くんが、パタリと姿を見せなくなった。
そして義勇さんも同じだった。義勇さんも顔を見せなくなった。
ある日の午後、リハビリを兼ねて廊下を歩いていると、アヲイとなほたちが忙しそうに薬湯を運んでいるのに出くわした。
「あ、ゆきさん。顔色は良さそうですね」
「うん、ありがとう。ちょっと聞きたい事があるんだけど、最近、無一郎くんはどうしてるかアヲイさん知ってる?」
何気なく尋ねた私の言葉に、アヲイが一瞬、言い淀むような表情を見せた。
「時透様なら、今回の会議で新しい継子が決まったそうですよ…」
「新しい、継子…?」
「ええ。なんでも、今度の継子は相当な筋が良いらしくて…。時透様もかなりお気に入りのようで、付きっきりで稽古をつけているという噂ですよ」
「継子は、男の子?」
「あっ…それが…女の方らしいです…」
アヲイの言葉に、心臓がドクンと鳴った。
「二度と君を傷つけるものは傍に置かない」と、私の髪に顔を埋めて誓ってくれた無一郎の声が耳の奥で蘇る。
あんなに私を求めてくれていたのに。私の髪が柔らかくて好きだと言ってくれたのに。
その継子に夢中なんだ…
「そう、なんだ。良かった、良い人が見つかって…」
引き攣った笑顔を浮かべるのが精一杯だった。
柱としての責任があるのは分かっている。けれど、あんなに疑うような眼差しで私を独占しようとしていた無一郎くんが、私に会いに来ない時間を、見知らぬ誰かに注いでいる。
急に一人ぼっちだ…
みんな私の事忘れちゃったのかな…?無理もないか…任務とかで忙しいよね。柱なんだから…
私が勝手すぎたんだ…
柱みたいなすごい人達に甘えすぎたんだ…
「私……本当に、大丈夫なのかな」
ぽつりと溢れた独り言は、静かな廊下に虚しく響いた。
無一郎くん…会いたいな…
あの日怖いと感じてしまった無一郎の熱い求めてくるような口付けを、今は酷く恋しくなっている自分がいた…。