第71章 新しい継子〜時透無一郎 冨岡義勇
無一郎が任務より戻ってきて一週間が過ぎた。
毎日蝶屋敷に、無一郎は通ってゆきとの時間を過ごしていた。
「ゆき今日も膝の上においで…」
最近ずっと無一郎くんは、私を膝の上に座らせて髪を撫でてくれる。
だけど、あの日以来決してそれ以上の事をしてこなくなった。
「怖くない?」
「うん」
「ゆきの髪は、柔らかくて好きだよ」
「ありがとう…」
「ねえ、ゆき」
ふいに耳元で囁かれた声に、びくりとする。
無一郎は私の肩に顎を乗せたまま、ぼんやりと窓の外の景色を見つめていた。
「近いうちに、柱合会議があるんだ。またみんなで集まることになってる」
「柱合会議…?」
私が答えると、無一郎くんは「そう」と短く頷き、少しだけ腕の力を強めて私を抱きしめた。
「今回の会議で、僕のところに新しい継子を付ける話が出ると思う。例の…凛が居なくなったから」
無一郎くんの言葉に、私の胸がズキリと痛んだ。
かつて無一郎くんの継子だった凛。
無一郎くんの婚約者である私を疎ましく思い、私に深い傷を負わせた…。
「次は、もっとまともなのが来ればいいんだけど」
「無一郎くん…」
「僕は、君を傷つける可能性のあるものは、二度と傍に置きたくない。でも、柱としての責任もあるから…」
無一郎くんは私の髪に顔を埋め、悔しそうに呟いた。
「君は、いつ復帰するつもり?身体の調子は大丈夫なの?」
「長い間一ヶ月以上お休みさせてもらったから、そろそろお稽古に、参加したいなとは思ってる」
無一郎は、ゆきの髪を撫でながら話す
「最近冨岡さんってここ来てるの?」
疑いの眼差しで無一郎くんは私を見て来る…だけど…
「来てないよ…」
「嘘はやめてよ」
「嘘ついてないよ!」
そう…嘘なんてついていない。無一郎くんが任務から戻って来た日…あの日から一度も顔を見ていない。
あの日…義勇さんにベッドに押さえつけられ無理矢理された口付けを思い出す度に山賊の悲しい記憶が薄れてくる
そうやって強引に私はズルい手を使って山賊に身体を弄ばれた感触を忘れようとしている…。
無一郎くんには、言えない…山賊の話は知られてはいけない。
でもそんなズルい事を隠しても、神様がみている…
ずっと見られていたんだと思うの…