第70章 練習の終わり〜冨岡義勇 不死川実弥
突然の抱擁に、無一郎の身体が石のように固まった。
「ゆき……?」
「さっき無一郎くんが眠っちゃって膝枕しても怖くなかったの…だったら抱きしめられると思って」
ゆきは、僕の身体にしっかりと腕を回している…
柔らかい膨らみが身体に密着する…ずっと焦がれていた感触…
「もう…いいってこと?」
無一郎は、固まったままゆきに尋ねた。
「多分…今は大丈夫…」
その言葉を聞くと同時に無一郎は、ゆきの背中に腕を回した。
「甘い匂い…」無一郎は、ゆきの首筋に顔を埋めて匂いを嗅いだ。
「大丈夫なら、口付けしてもいい?」
無一郎の瞳が、熱を帯びて潤んでいる。
ゆきが震える唇で「…うん」と答えた瞬間、逃げ場を塞ぐように、無一郎の細い指先がゆきの顎を上向かせた。
重なり合った唇は、驚くほど熱い。最初は触れ合うだけの優しい接触だったが、ゆきの甘い吐息を吸い込むたび、無一郎の理性が危うくなる。
舌先が唇の隙間を割り込み、口の中をねっとりと這い回る。
絡み合う舌の生々しい感触と、溢れる唾液の音が、静かな病室に艶めかしく響く…
ゆきは、息ができなく堪らず無一郎の隊服を引っ張り身体から引き離そうとする。
だが、華奢に見えるがゆったりとした隊服の下には逞しい体が隠れていた…ゆきのそんな抵抗ではびくともしなかった。
息苦しさと、無一郎の攻めに押されてベッドに倒れてしまった。
無一郎の指先が浴衣の合わせに掛かり、露わになろうとしたその時。
扉の向こうから義勇の声が響いてきた。
「時透、いるのか」
熱を帯びていた無一郎の瞳が、一瞬で不機嫌そうに冷める。
「チッ、何だよ」
舌打ちを隠そうともせず、無一郎は乱れた服を直して渋々扉を開けた。
そこには、義勇の姿があった。
「任務の報告はしたのか?」
「…ま、まだだけど」
「早く行け!お館様を待たせるな!」
義勇の正論に、無一郎は不貞腐れた顔をして「また明日来るね。続きしようね。」とゆきに告げ病室を出て行った。
間一髪のところで肌を晒さずに済んだゆきは、激しい鼓動を抑えながら深く胸をなでおろした。
「まだ、俺の付けた跡消えていないだろう?堪らずきつく吸ったからな…」