第67章 悲しい出来事〜R強強
三人が出した結論は、あまりにも悲しい「偽り」だった。
「いいですね。時透くんには『任務中に遭遇した鬼の血鬼術による負傷』、そして『神経を蝕む毒による精神錯乱』だと説明します」
不死川が口を開く
「ああ。あの足の痣も、身体の傷も、全部『崖から転落した際の衝撃』ってことにすりゃあいい。クソが…胸糞悪ィ嘘だぜ」
義勇はただ、眠るゆきから視線を外さずに口を開いた。
「それと…俺の不手際だと言え。俺がゆきを守りきれなかったから、こんな傷を負わせたと。俺が憎まれ役になれば、時透の意識は真実から逸れる」
その時、廊下を激しく走り寄る足音が響いてきた。
「ゆき! どこにいるの、返事をしてよ!」
止める隊士を振り切り、無一郎が部屋へ辿り着いた。
顔を真っ青で、呼吸はすごく乱れていた。
「胡蝶さん、ゆきは!? 無事なんだろう!?」
しのぶが静かに立ちはだかり、落ち着いた声で告げた。
「命に別状はありません。ですが、酷い状態です。山中に出現した想定外の鬼に襲われ、彼女は崖下へ落とされました」
「鬼…? 嘘だ、そんなの…昼間じゃなかったの?」
「太陽は雲に覆われ雪も降っていたので鬼は出てこれたのでしょう。身体の打撲も酷いですが、何より鬼の毒が精神を蝕んでいます。今は一時的に錯乱しており、誰彼構わず怯えてしまう状態です。婚約者である貴方のことも、今は認識できないかもしれません…」
不死川が壁を殴り、無一郎に追い打ちをかけます。
「あいつが『汚された』だの『来るな』だの喚いても、それは全部毒のせいだ。いいか、まともに受け取るんじゃねェぞ」
無一郎は力なく膝をつき、奥の部屋で横たわるゆきを見つめた。
義勇はその背中に向かって、ゆっくりと語りかけた。
「俺がついていながら。すまない…時透」
「上弦でもない鬼に、手こずってゆきにこんな怪我を負わせて…あなたを許せない…」
憎しみでも、怒りでもいい。今は自分を標的にして、彼女の「真実」にだけは触れないでくれ…。
ゆきは、絶対にこの事は、お前に知られたくないはずだ…
俺にはわかる…知られたら嫌われると思っている
だからお願いだ…俺を憎んで、恨め…時透…。