第67章 悲しい出来事〜R強強
お前は、ずっと綺麗で尊い…
重なる唇から伝わる震えに、義勇の心は乱れる。
「汚れてなどいない」
そう言い切る義勇の瞳には、愛する者を守れなかった己への怒りと、ゆきを絶望から引き戻そうとする想いが見えた。
義勇はゆきを、蝶屋敷の奥まった一室へと運び込んだ。
この一件の真相を知るのは、冨岡義勇、共に山賊を掃討した不死川実弥、治療を担う胡蝶しのぶ、そして報告を受けた産屋敷耀哉の4人のみ。
婚約者である時透無一郎には、まだ何も知らされていない。
しのぶによる診察の結果、ゆきの体は凄惨な状態だった。
逃げようとした際、山賊に執拗に踏みつけられ、万力のような力で握られた足首は、捻挫という言葉では足りないほどに腫れ上がり、紫色の内出血が痛々しく広がっていた。
男の一人に組み伏せられ、無理矢理に身体の関係を持たされた痕跡。
抵抗の虚しさを物語る打撲痕が、白い肌に無数に残されていた。
診察を終え、部屋から出てきたしのぶの顔は、怒りで青白く震えていた。
廊下で待っていた義勇と不死川に、しのぶは声を潜めて告げる。
「身体の傷以上に、心が壊れています。それに、時透君にはどう説明するつもりですか?」
その問いに、不死川が壁を激しく叩いた。
「あいつに、こんなこと…言えるわけねェだろうが。ゆきを大事に思っている時透がどんな顔するか、考えただけでも…それにあいつは、まだガキだ…こんな事実背負え切れねェだろ…」
義勇は、拳を固く握りしめた。
無一郎がゆきをどれほど大切に想っているかを知っている。
もし真実を知れば、あの少年は怒りと悲しみで自分を見失うかもしれない…。
あるいは…ゆきを、拒絶するかもしれない…
これまで通り時透は、愛せるのか?事実を知っても?
義勇は、病室で眠るゆきの側に行った。
ゆきが、汚されたと言った唇を俺は愛おしくなり堪らなく奪った。
それが時透への裏切りであることも、ゆきをさらに混乱させる行為であることも分かっている。
義勇は、口を開く…
「時透には伏せておこう」
俺があの時、一緒に産屋敷邸に行きたいと言ったゆきを連れて行っていれば…こんな事にはなっていなかった…。
俺の責任だ…俺の…