第67章 悲しい出来事〜R強強
義勇は一歩一歩、雪を踏みしめる音さえも立てぬよう、細心の注意を払って歩を進めた。
腕の中のゆきは、義勇の羽織に顔を埋めたまま、時折ひきつけを起こすように小さく肩を揺らしている。
「すまない…」
何度口にしても足りない言葉が、義勇の唇から零れ落ちる。
柱として、そして一人の男として、最も守るべき存在をあんな場所に置き去りにしてしまった。
俺の責任だ…
「あ…の…ぎ、義勇さん…」
腕の中からか細い声でゆきが、俺を呼んだ。
「何だ?どうした?」
歩みを止めて義勇は、ゆきを見た。
「義勇さんに、貰った…羽織、囲炉裏に入れられて燃やされちゃって…ごめんなさい…」
俺の羽織の隙間から泣きそうな顔をしたゆきが震えながら謝ってきた…
俺は胸が張り裂けそうになった…そして口付けしたくなった…堪らなく愛おしすぎて
俺は、顔を近づけていったその時…
「やめて…。私、汚いから。あの男たちに、全部…。唇も、体も、全部…汚されちゃったから…汚れちゃう…義勇さんが…」
ゆきは義勇の胸元に顔を押し付け、泣きじゃくった。
「義勇さんに貰った大切な羽織も守れなかった。こんなに汚れた私はもう誰にも相手にされない」
義勇は何も言わず、ただゆっくりと、再びゆきを強く抱きしめた。
拒絶されても、その震えが自分に伝わる距離を離そうとはしなかった。
「汚れてなどいない…」
義勇の優しい穏やかな声が、雪の降る山中に響く。
「羽織など、何度でも贈ってやる。そんなことのために、お前が謝る必要はない」
俺が判断を誤ったからこんなに愛おしいお前が傷ついた
「お前を傷つけた奴らが、お前の価値を奪うことなどできはしない。たとえこの世の誰もが皆お前を汚いと言おうと、俺だけは、お前を清らかだと言い続ける」
「義勇、さん…」
「時透の役目だと思うが無性に口付けがしたい…今は俺に委ねてくれないか?」
ゆきは、ゆっくりと目を閉じた…義勇がゆきに唇を重ねていく…
何も汚くなどない…いつものお前の甘い香りと甘い味がする…綺麗だ…。
愛おしいお前は、世界一綺麗で清らかだ…
ゆき…すまなかった…こんな辛い思いをさせて…
本当にすまない…ゆき…