第67章 悲しい出来事〜R強強
冷たい風が吹き抜け、足首の痛みが限界に達したその時だった。
「見つけたぞぉ。女一人でこんなところで、足を引きずって。いい獲物だ」
岩陰から現れたのは、笑みを浮かべた三人の男たち。
鬼ではない、しかし、山に潜み獲物を狙う山賊だった。
ゆきが刀を抜こうと柄に手をかけた瞬間、一人の男が背後から組み付き、力任せに腕を捻り上げた。
「離して! 離しなさい!」
悲鳴は虚しく雪山に吸い込まれていく。
足の痛みで踏ん張りがきかず、無惨にも地面に組み伏せられたゆきから、男たちは無造作に日輪刀を奪い取った。
「上等な刀じゃねえか。…しかし可愛い顔してるなぁ…中身も上等そうだ」
「奥の小屋へ運べ!ゆっくり楽しませてもらう」
ゆきは、山賊達に無理やり引きずられ、古びた小屋の板間に放り出された。
逃げようにも足は動かず、日輪刀も奪われ、心細さと恐怖で震えが止まらなかった。
一方、産屋敷邸へと向かっていた義勇は、ふと足を止めた。
昨夜、山小屋でゆきに触れた時の、体温や吐息がまだ指先に残っている。その夜に時透との情事の音…声を藤の家の部屋で聞いてしまった…
突き放すようなことを言ったのは、自分自身の理性が崩れそうだったから。
そんな事を考えながら歩いている時にふと胸騒ぎがした…
その時、上空から必死に羽ばたく音が聞こえてきた。
「カァ! カァァーッ! 義勇! 大変ダ! ゆきガ、連レ去ラレタ!!」
寛三郎が、今までにないほど激しく鳴き声を上げている。
「何だと?」
「小屋! 山道ノ脇ノ小屋!! 刀モ奪ワレタ!!」
義勇の瞳から、先ほどまでの迷いや冷たさが消え、凄まじい殺気が溢れ出した。
「俺は、何をしていたんだ」
ゆきの足が悪いことに、本当は気づいていた。それなのに、自分の動揺を隠すために一人にした。
胡蝶と会うなど嘘をついてお前を遠のけた…
夜じゃないから鬼は出ない…そんな甘い考えをしていた
判断を誤った…自分自身のお前が好きと言う気持ちを隠すために…
「もしあいつに傷一つでもつけてみろ……」
「義勇ハヤク!ハヤク!行ケ!ゆきノ元へ!」
義勇は、雪道を風を切るようにゆきのいる方へと必死に走り出した。
止まることなく必死に…