• テキストサイズ

鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎、冨岡義勇★R18

第66章 秘密〜時透無一郎 冨岡義勇【R】


夜が明け、藤の家を朝霧が包む頃…。

昨夜の情事の熱を肌に残したまま、ゆきはふと、無一郎の腕を抜け出して中庭に面した縁側に出た。

​ふと視線を落とした先、霜が降りた枯れた草の中に、見覚えのある輝きを見つける。

「えっ…?何で…」

​それは、かつて義勇の屋敷で義勇が池に投げ捨てた、髪飾りだった。

なぜこんな場所に。

泥ひとつ付いていないその輝きは、誰かが大切に持っていて、そして今、投げ捨てられたばかりであるかのようにそこにあった。

​そこへ、隊服に着替え身支度を整えた義勇が通りかかった。

​「義勇、さん…」

​ゆきが呼びかけると、義勇は足を止めたが、振り返りはしなかった。

義勇の視線は、ゆきの指先にある髪飾りを捉え、冷たい視線で見据えた。

「こ、この髪飾り…池に捨てたやつ…もしかして義勇さん…見つけてくれてずっと持っててくれたんですか?」

切なそうな顔で、俺を見てゆきは聞いてきた…。

浴衣の胸元が、乱れたままでやけに肌がよく見える。お前は、昨夜の情事で時透に付けられたであろう唇の跡を、気付かぬまま俺に見せつけて、その思い出の髪飾りのことを、問いかけてきた…。

冷たい朝露に濡れた縁側で、俺たちは一歩も動けずにいた。

​ゆきが大事そうにその髪飾りを握りしめるたび、俺の胸の奥に、えぐられるような痛みが走る。

お前のその真っ直ぐな瞳は、いつも俺の隠したい本音を見透かそうとする。

​俺はゆっくりと視線を上げ、ようやくゆきの顔を正面から捉えた。

​「そうだ…」

​一歩、間を詰める。

ゆきの肩がびくりと強張るが、俺は構わずに手を伸ばした。

​指先で、お前の鎖骨付近に残る時透の痕跡を、なぞるように触れた。

指先から凍りつくような嫉妬が全身に回った。

​「捨てたはずのものを、どうしても捨てきれずに持っていた…。滑稽だろう」

​俺はゆきの手に重なるようにして、その髪飾りを包み込んだ。

​俺の手は微かに震えている。

突き放したいのに、抱き寄せたい。
忘れたいのに、愛おしくてたまらない。

​俺はゆきの耳元に顔を寄せ、お前の甘い香りに酔いしれたかった…だが香ったのは時透の付けた男の香りだった。



/ 507ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp