第66章 秘密〜時透無一郎 冨岡義勇【R】
無一郎は隠を視界から外すと、迷いのない足取りでゆきの元へ歩み寄った。
床に膝をつき、義勇の羽織に包まれたその肩を抱き寄せる。
指先がゆきの肌に触れた瞬間、無一郎が違和感を感じた。
「熱いじゃないか」
冷え切っているという隠の言葉とは裏腹に、ゆきの体温は高く、吐息はまだ微かに甘く乱れている。
無一郎はそのまま、自分の胸元へゆきをしっかりと強く抱き上げた。
「冨岡さん…ゆきの体、体温低下どころか熱いんだけど…二人で何してたの?」
義勇は、無一郎の目を真っ直ぐに見た。
「俺が先ほどまで暖めていたからな…熱いんだ。」
「顔が赤いよ。本当に?ただの体温低下?」
無一郎の指先が、ゆきの熱を帯びた頬に触れる。その瞳は、隠が必死に整えたはずの彼女の綻びを、本能的に見抜こうとしているようだった。
背後で、義勇がわずかに拳を握りしめる…。
「時透…ゆきは、ひどく衰弱している。あまり構うな」
義勇の抑揚のない声。
しかし、その声には微かな動揺が混じっているのを、無一郎の鋭い感覚が逃さなかった。
無一郎は立ち上がり、ゆきを横抱きに軽々と抱き上げた。
「冨岡さん、お礼は言わない。僕のゆきに、変な跡がついてなきゃいいけど…あなたを僕は信用していないからね。」
無一郎の視線が、義勇の首元から手元へと鋭く刺さる。
義勇は視線を逸らさず、ただ静かに無一郎の言葉を受け止めた。
「早く行け…吹雪がやんでいるうちに」
それが義勇にできる、精一杯の言葉だった。これ以上ここにいれば、嘘が真実へと剥がれ落ちてしまう気がしたからだ。
時透に勘付かれる…ゆきはそれを望んでいない
無一郎は、腕の中のゆきを抱き直した。
「行こう、ゆき。藤の家に着いたら、僕が全部綺麗にしてあげるから。お風呂で暖めてあげるからね…大丈夫だよ。」
腕の中で微かに震えるゆきに、無一郎は耳元で甘く、それに嫉妬心いっぱいで囁いた。
時透に連れて行かれるお前を見てやるせない気持ちになった。時透に譲ると諦めたのにこうやって隙があればお前に俺は手を出しお前が決めた決心を揺るがしている…。
俺は何をしたいんだいったい…
くそっ…