第66章 秘密〜時透無一郎 冨岡義勇【R】
開いた扉の向こうには、義勇の屋敷でゆきの世話をしていた隠の姿があった。
その隠は、外に向かって他の隠に中に入らないように指示した。
「柱…私達の後方に、霞柱様達の部隊がおりこちらに向かっています。」
義勇は、ゆきから離れて隊服を整えた。
冷たい床の上で、放心状態になっているゆきに隠は、近寄りすぐに隊服を整えてあげた。
「早くゆき様しゃんとしてください。すぐに霞柱様が来ますよ!」
義勇は、焦ってゆきを見た。先ほどまで自分が、ゆきを半ば無理矢理快楽の淵に引きずり込んでいた…
顔はまだ火照ったままで、情事の余韻が残る表情だった。
隠は、自分の冷えた掌でゆきの頬を包んだ。
「しっかりしてゆき様!」
そして乱れた髪も綺麗に直してあげた…
ゆきは、やっと気持ちが切り替わった表情を隠に向けた。
「ありがとう…。」
そう言うと同時ぐらいに、扉が開いた。
無一郎が、息を切らして立っていた…。ゆきの側に行こうとすると義勇の屋敷のさきほどの隠が立ちはだかった。
「どいて。聞こえないの…?」
無一郎の声は、冬の夜風のように鋭く、冷たかった。
目の前の隠を、まるで存在しない障害物のように冷たい瞳で見下ろす。
だが、義勇の屋敷に仕えるその隠は、震える足で踏み止まり、必死に腕を広げた。
「滅相もございません! ですが、ゆき様は極度の体温低下により、今は安静を要する状態。我々、医療の心得がある隠が責任を持って、麓の藤の家までお運びいたします!」
「体温低下?すぐに暖めないと…」
無一郎の視線が、隠の背後にいるゆきへと注がれる。
そこには、床の上で義勇の羽織に包まるゆきの姿があった。
髪は乱れていない。隊服も乱れてはいない。
けれど、その頬にわずかに残る赤みと、どこか焦点の定まらない潤んだ瞳…。
そして、部屋の隅に立つ義勇が、一言も発さずに剣を握り直したその不自然な様子。
「僕が抱いて運ぶよ。」
「いえ柱様にそのような事をさせられません。」
無一郎は、隠を面倒くさそうな表情で見た
「ゆきは、僕の婚約者だよ…他の奴に触られたくないんだ。」
「……」
隠しは、何も言えず後に下がった。