第65章 雪山での秘密の情事〜冨岡義勇【R】
「まだ、そんな風に自分を縛るのか」
義勇の低い声に、怒りにも似た切なさが混じっていた。
ゆきは、自分の肩を抱きしめるように腕を回し、頑なに義勇に触れようとしない。
隙間から逃げていく体温が、 ゆきの顔をさらに青白くさせた。
無一郎を思うあまりに義勇が入り込もうとする隙をみせなかった。
「死ぬぞ。意地を張ってここで凍え死ぬつもりか」
「いいんです。私は…」
途切れ途切れの言葉を遮るように、義勇は ゆきの固く組まれた腕を、強引に引き剥がした。
「っ、義勇さ…ん!」
「いいわけがない。」
義勇はゆきの両手を無理やり自分の首の後ろへと回させた。
そして、逃げ場を塞ぐように、その細い体を自分の胸へと完璧に密着させた。
「離すな。時透のことは、今は忘れろ。俺の体温だけを感じていろ」
義勇はさらに力を込め ゆきの背中に大きな手を回して、自分の方へと力尽くで抱き寄せた。もはや、二人の間に風が通る隙間すらない。
「あ…っ」
無理やり抱きつかされた形になったゆきの唇に、義勇の熱い首筋が触れる。
拒もうとしても、吸い込まれるような高い体温が、凍えた体を内側からじわじわと温める。
「嫌なら、力で振り払え。できないならこのまま俺に委ねろ」
耳元で囁かれる義勇の声は、命令のようでいて、どこか甘く優しい。
義勇の心臓が、すぐそこで激しく脈打っているのが伝わってきた。
それに…あまりにも強く生々しく義勇から男を感じた…
ゆきの指先が、自然に義勇の背中の隊服を、ぎゅっと掴んでいた。
一度その温もりを知ってしまえば、その温もりを手離したくないと思ってしまった。
「それでいい」
義勇は ゆきが掴み返してきたのを感じると、満足げに、静かに目を閉じ、 ゆきのうなじに顔を埋めた。
ゆきの体が俺の体に触れる…柔らかい感触…かつて毎晩お前を抱いた日々を思い出す…
それに最後に抱いたあの日も思い出す…
お前は、時透のものだ…諦めるように努力もした
だが今俺に抱きつくお前は紛れもなく俺だけのモノだ…誰も邪魔できない…
俺が ゆきの一番近くに今居る
無一郎くん…私また流されそうになってる…義勇さんに…暖かい温もりに…溺れそうだよ…