第65章 雪山での秘密の情事〜冨岡義勇【R】
義勇は、黙ってゆきから手を離した…。
「頑張って歩くので、山を降りましょう。そうしないと夜になっちゃいます。」
俺は…お前とここで一晩過ごしたい
勝手だな…俺は…いつもお前を前にしたら理性を忘れる。
「任務の鬼の調査できなくなりますが…ごめんなさい」
「いや、引き返さない今夜ここで泊まる。明日の朝から調査する。一日休めば足も良くなるだろう。」
「えっ…でも…」
「柱の命令だ!」
それは、ずるいよ…義勇さん…絶対逆らえないよ
「天候も悪く雪も振っているし雪に足を取られて危ない…ここで朝まで過ごす。」
暫くして、外は吹雪になっていた…。
パチッ、とはぜる音が小さくなる。囲炉裏の中で赤く光る炭はもう数えるほどしかない。
「薪が、もうないな」
義勇が小さく呟き、空になった木箱を見つめる。小屋の外では風が唸りを上げ、隙間風が容赦なく二人の体温を奪っていく。
「義勇さん、私なら平気です。羽織もありますし」
「いや、お前は足も痛めている。冷えは体に毒だ」
義勇は立ち上がり、入り口の戸を少しだけ開けて外の様子を伺った。視界を遮るほどの白銀の世界。今外に出れば、柱といえども戻るのに苦労するだろう。だが、このままでは朝が来る前に、ゆきの体は芯まで冷え切ってしまう。
「…俺が拾ってくる。ここで待っていろ」
「待ってください! この雪ですよ? 迷ったらどうするんですか。危ないです…」
思わず義勇の隊服の袖を掴んでいた。
義勇は一瞬、驚いたように目を見開いたが、やがて視線を落とし、掴まれた手を自分の手で包んだ。
「分かった。外へは行かない。だが…代わりに言うことを聞け」
義勇はゆきの隣に深く座り直し、自分の片腕を広げた。
「こちらへ来い。薪がないなら、俺の体温で暖める。これなら文句はないだろう」
そんなの駄目だよ…何でこうなっちゃうの…
「命に関わる事だ…拒む選択肢はない。来い」
それでもゆきは義勇から目を逸らしその場を動かなかった。
「嫌かもしれないが…柱の命令だ」
義勇の言葉は静かだが、逆らうことを許さない重圧感があった。 外では風の音がさらに激しさを増し、建付けの悪い戸がガタガタと震えた。
囲炉裏の火が消えゆく今、小屋の中の空気は、吐く息が白くなるほどに冷えきっていた。