第65章 雪山での秘密の情事〜冨岡義勇【R】
翌日二人は、朝から任務に出ていた…
冷たい風が吹き荒れる雪山。
昨日、道場であの光景を見てからというもの、義勇の心は淋しく冷え切っていた。
隣を歩くゆきとの間には、かつての温もりはなく、ただ気まずい沈黙と、物理的な距離以上に遠い心の溝が出来ていた。
その時だった。茂みから真っ白な雪うさぎが勢いよく飛び出してきた。
「きゃ…!」
動揺していたゆきは、その小さな影に過剰に反応し、足元の凍った斜面に足を滑らせた。短い悲鳴と共にゆきの体が傾いた。
「危ない!」
義勇が手を伸ばしたが、昨日の無一郎との抱擁が脳裏をよぎり、一瞬だけ指先が躊躇してしまった。
そのわずかな遅れが、ゆきを雪の中へと転倒させてしまった。
「痛い…あ、足…」
「大丈夫か!?」
義勇が、焦った様子でゆきに駆け寄った。
ゆきは、「大丈夫です」だけ言って何度も立とうとしては崩れ落ちる…
俺は有無を言わさずにゆきに背中に乗るように指示した…
俺の首に遠慮がちに回す手…遠慮がちに背中に身を委ねる…
前ならもっとしがみついてくれたんじゃないか?
「歩きにくいから体を背中から離すな」
その一言で、お前はゆっくりと俺にもたれかかってきた…
耳元に、お前の柔らかな吐息を感じる…。
ゆきを背負い、義勇はようやく見つけた古びた山小屋へと逃げ込んだ。
外は吹雪になり始めていた。
囲炉裏に火を焚べ、ゆきを座らせた。
腫れ上がった足首を処置しながら、義勇は、申し訳ないと心から思った。
山小屋の中、パチパチと爆ぜる囲炉裏の火だけが、二人の間に流れる重苦しい空気を繋ぎ止めていた。
義勇の手が、ゆきの細い足首に触れる。冷え切った肌に、彼の指先の熱が伝わるたび、ゆきの体が微かに震えた。
「すまない…」
ぽつりと、義勇の口から漏れた言葉。
それは、足首の手当てが遅れたことへの謝罪なのか。それとも、あの瞬間、差し出す手を躊躇ってしまった自分への嫌悪なのか。
義勇は、手当てを終えてもなお、その足を離すことがでずにいた。
「あの…?師範?」
ゆきが、不思議に思い声をかけるが反応がない。
「師範?」
ゆきは思わず…
「義勇さん…」