第64章 快楽に酔う〜時透無一郎【R強強】
「ふ〜ん…甘かったんだ…」
冨岡さんに今すごく嫉妬してる…諦めるんじゃなかったの?任務にも連れて行かず忘れようとしたくせに、帰って来てすぐに…介抱するふりして甘ったるいくちづけを意識が朦朧としているゆきにするなんて…
未練たらたらじゃないか…。
君は、打撲で体中痛いはずなのに隊服を着て稽古に出た。
僕は、休めと言ったが毎日稽古に胡蝶さんが、参加していてこの程度の怪我で休むなど出来ないとの事だった。
‐‐‐
道場に着くとすでに、義勇の姿があった。
「稽古に来ると思い待っていた。今日は帰れ…怪我しているだろう?今日も胡蝶が来る…またお前に手荒な稽古をつけるかもしれない。だからすぐに帰れ」
「で、でも…」
義勇は、冷たい表情を崩さなかった。
「いいえ、義勇さん。私は大丈夫ですから…」
お前が食い下がろうと一歩踏み出したその時だった。
お前の顔色がふっと紙のように白くなり、膝の力が抜けた。
連日の無理と、治りきっていない打撲の痛みが限界を迎えたんだろう。
倒れそうになるゆきの身体を、義勇は誰よりも速く、それでいて壊れ物を扱うような手つきで抱きとめた。
「無理だと言ったはずだ…」
彼の低い声が、ゆきの耳元で震える。
その時、道場の入り口から「あらあら」と、冷ややかな声が響いた。
「随分と熱心なご指導ですね、冨岡さん。私の不在の間に、随分とお二人で……仲睦まじいことで」
現れたのは、しのぶさんだった。彼女の瞳は笑っていない。
義勇はゆきを抱きしめたまま、彼女を鋭く見据えた。
「胡蝶、こいつにこれ以上の稽古は不要だ。俺が時透の屋敷に連れて帰る」
「おやおや、過保護ですねえ。先ほどまで『手荒な稽古をつけるかもしれないから帰れ』なんて、私を悪者のように言っていたくせに」
しのぶの放った言葉が、凍りついた道場の空気をさらに鋭く切り裂く。
「過保護? 違う。こいつには休息が必要なだけだ」
「冨岡さん甘いですよ。あなたの継子ですよね?まるであなたの恋人みたいですよ…扱いが…」
義勇は、驚いた様子でしのぶを見た。
すれ違いざまにしのぶが耳元で囁いた。
「全然彼女を突き放せてないですよ?もっと私と仲良くして彼女にわからせないと…冨岡さんの行動は逆になってますよ。」