第64章 快楽に酔う〜時透無一郎【R強強】
朝目を覚ますと無一郎くんの腕の中で私は眠っていた。
「おはよう…ゆき」
昨日しのぶさんに手合せしてもらった時の打撲が後を引いていてすごく痛かった…
「いっ…た」
「大丈夫?痛いよね?今日は稽古休んだら?」
無一郎が、心配そうに聞いてくる。
「ううん。昨日無一郎くんが身体を手拭いで冷やしてくれたから大丈夫だよ。ありがとう…疲れてたのに…」
「う、うん」
それ僕じゃないよ…冨岡さんだよ。君の身体を冷やし口移しで水を何度も飲ませたのは僕じゃないよ…
「昨日の夜…水飲んだのは覚えてる?」
ゆきが、顔を赤くして照れた様子で下を見た。
「感触が残ってるの…唇に…意識が朦朧としてたけど…口移しだよね?ありがとう…無一郎くん」
僕じゃないよ…
「君を屋敷に連れて帰ってきてくれたのは?」
「そ、それは…義勇さんだよ。だけどすぐに帰ったから安心して。」
「わかった」
意識が朦朧としていたゆきの記憶は曖昧なものになっていた…。
「…ねえ、ゆき」
無一郎が、腕の中にいるゆきの顔をじっと覗き込んだ。その瞳はいつもより少しだけ暗く、熱を帯びている。
「そんなにその…『感触』が残ってるの?」
「えっ、あ、うん……。すごく優しかったから……。あ、でも、変な意味じゃなくて!」
顔を真っ赤にするゆきを見て、無一郎の胸にちくりと鋭い痛みが走る。 (優しかったのは、僕じゃない。…冨岡さんだ) その事実を告げる代わりに、無一郎はゆきの腰を抱き寄せる腕にぐっと力を込めた。
「じゃあ、今の感触で上書きしてあげる」
「え…っ、むい、く…ん?」
重なった唇は、記憶の中にある「水を含ませるための震えるような接触」とは違って、もっと強引で、体温を直接流し込むようだった。
「ん…ぅ…っ」
何度も角度を変えて、吐息をすべて吸い取るように深い口づけが繰り返される。
ようやく唇が離れたとき、ゆきは熱に浮かされたように潤んだ瞳で無一郎を見つめていた。
「…どう? 僕の感触、ちゃんとついた?」
無一郎は、ゆきの耳元で甘く、少しだけ低くなった声で囁く。
「う、うん…」
「昨日とどう違う?」
「昨日は…なんだか甘かった」
「甘かった?」
「うん…優しくて甘いくちづけだった」