第62章 壊れるほど抱きたい〜時透無一郎【R強】
無一郎の指先が、ゆきの頬をなぞる。
その動きは羽のように軽いのに、肌に触れる温度は驚くほど熱を帯びていた。
「そんなに震えて…どうして? 悪いことをしたのは君の方でしょ」
無一郎は、ゆきの浴衣に手を入れていき胸を優しく撫でた…
「ねえ一月後、君はどんな顔で冨岡さんを迎えるんだろうね。…ああ、冨岡さんはもしかしたら胡蝶さんと良い仲になっているかも?」
ゆきの胸が痛んだ…この前蝶屋敷の中庭で二人は寄り添っていた…
私を邪魔そうにしていた…
そうなるかもしれないよね…
ゆきの表情がどんどん切なく辛そうになってくる…
「泣いてもいいよ。その涙も、全部僕が飲み干してあげる。明日には、もう冨岡さんのことなんて、思い出せなくなるくらい…愛してあげるからね」
抵抗する力さえ奪うような深い口付けの中で、ゆきは自分がゆっくりと、無一郎という深い霧の中に沈んでいくのを感じていた…。
ー数日後ーー
私の手の怪我もだんだん改善してきた頃あたりから、無一郎くんが昼間稽古をつけてくれた。
昼間はとても優しくて昔の無一郎くんのようだった。
ただ夜になると…人が変わったかのようにゆきを荒々しく抱いて必ず首筋を噛んで跡を付けた…。
ーーー
ゆきは、庭で無一郎に稽古をつけてもらっていた。
「そうそう!上手いよゆきその調子。軽く手合せ出来るまで手回復したね。」
竹刀を、直しながら無一郎はゆきに笑顔を向けた。
「まだ少し痛むけど数日経てば大丈夫だと思う」
無一郎が、申し訳なさそうな顔をしてゆきに歩み寄ってくる…
「僕が側にいたのにこんな怪我させてごめんね」
「う、ううん…気にしてないよ」
「良かった!」
屈託のない笑顔…
今まで通りの優しい無一郎くんが昼間に存在するので私は混乱してしまう…。
「今日の晩ごはん何かな?僕の好きなふろふき大根あるかな?」
「どうかな?」
「すごくお腹減っちゃったね。いっぱい稽古したから」
「うん…」
無邪気で他愛も無い話をしてくれる…。
だけど…夜が違いすぎて怖いくらいなの…無一郎くん…。
私は混乱しちゃうよ…どちらが無一郎くんなのかわからないよ…
首元に付けられた噛んだ跡がズキンと疼いた…