第62章 壊れるほど抱きたい〜時透無一郎【R強】
無一郎は、ゆきの懐から大切に持っていた一通の手紙を無造作に取り出した。
「あっ…無一郎くん!返して…」
「これって昼間に冨岡さんの鴉が持ってきた伝言?君が鴉が来た時少し嬉しそうにしてたから何書いてるかすごく気になる…」
それは、ゆきが大切に、そして悲しみを堪えるように持っていた義勇からの手紙。
「返して無一郎くん!」
無一郎は手紙を広げ、月明かりのない部屋のわずかな灯りで内容を追う。
『胡蝶と一月ほど任務に出る。怪我をしているお前はゆっくり休め』
「へえ…。冨岡さん、ゆきを任務に連れて行かないんだ。僕の婚約者である君を諦めるために、わざわざ自分から遠ざかるんだ」
無一郎の手が、手紙をぎゅっと握りしめた。
「鴉が来た時は何かな?って嬉しかったけど内容見て悲しくなった? 冨岡さんが任務に連れて行ってくれない事がそんなに悲しいの?」
無一郎は手紙を床に捨て、ゆきの両手首を床に縫い付けるように押さえつけた。
「やだっ…」
無一郎くんの瞳はもはや澄んだ昔の瞳ではなく、獲物を決して逃さない狼みたいで怖かった…
「わかったよ。言葉や印だけじゃ足りないんだね。
君の頭の中から、その悲しみも、冨岡さんの名前も、全部追い出してあげる。
一月も経てば、忘れれるよ」
「無一郎くん…何だか怖いよ…」
「怖い?僕は隠れて密かに冨岡さんと身体を重ねていた君のほうが怖いよ…」
「そ、それは…」
「ほら言い返せないでしょ?ずっと一緒に継子として側に居て稽古して触れ合って…師範と継子以上になったんでしょ?僕を騙して…」
「ち、違うの騙したわけじゃないの…ただ…義勇さんと過ごす日々の中で…っ…んっ//」
無一郎の唇が、ゆきに言い訳を言わせないように塞いだ。
「綺麗事を言うなよ…僕を欺いた事には違い無いでしょ?今夜も寝かさないから…覚悟して…」
「ま、待って…」
「だから…待ってはもう僕は聞かないから…ね。」
無一郎くんが本当に…怖い…
外では風が木々を揺らしていたが、この閉ざされた部屋の中で、ゆきの声が誰かに届くことはない…。
この部屋には夜は誰も近づかないようにと無一郎が隠達に伝えていたからだ…