第62章 壊れるほど抱きたい〜時透無一郎【R強】
「そうだね…。君の口からは、まだ聞いてなかった。でも、そんなのもう関係ないよ」
無一郎はゆっくりと顔を近づけ逃がさないと言わんばかりにゆきの視線を捕らえた。
その瞳は澄んでいるのに、どこかゆきは冷たく感じた…。
無一郎は、噛み跡に触れた…
「この跡も、君が昨夜見せた顔も、全部僕だけが知ってる。冨岡さんにも、こんな顔見せないでしょ?…いや、冨岡さんには見せてるか…だって昔…ね?」
無一郎くんの瞳が怖い…何もかも見透かされている…
「だけどもう…見させない…」
無一郎はゆきの耳元に唇を寄せ話した。
「君が何度婚約を否定しても、既成事実は消えない。僕の付けた跡が消える頃には、また新しく噛んであげる。君が『自分は僕のものだ』って、思うまで何度でも」
そう言って顔を離した無一郎は悲しい笑みを浮かべていた。
「さあ、朝ごはん食べようか。今日は一日、僕のそばにいてね。いいよね…?」
ゆきは、「うん」と頷くしかなかった。
‐‐‐
日が沈み部屋に再び夜の帳が下りる頃、無一郎の「優しさ」は消えていた…
「ねえ、どうしてそんなに怯えてるの? 僕はただ、君を愛しているだけなのに」
夕食を終えた後、逃げ場のない部屋の隅で、無一郎は背後からゆきを包み込んだ。
無一郎くんが…怖い…
細い腕に見えて、柱としての鍛え上げられた力が、ゆきの自由を完全に奪っていた。
「昼間に、鴉が冨岡さんの伝言を持ってきた時、君…少しだけ嬉しそうな顔をしたよねどうして? 僕が隣にいるのに、どうして冨岡さんを想い嬉しくなる必要があるの?」
「べ、別に嬉しそうにしてないよ…」
「ふ〜ん」
無一郎は、ゆきのうなじに残る昨夜の跡を、確かめるように指先でなぞった。
「消えかかってる…言ったでしょ? 消える頃には、また新しく噛んであげるって」
無一郎の声はどこまでも冷ややかで、怖かった
抗おうとするゆきの手首を片手で軽々と押さえつけ、無一郎は耳元で残酷に囁く…
「君の体も、心も、記憶も…全部僕でいっぱいにしてあげるね。」
二人きりの部屋の中で逃げ場もない…
それは、優しさと狂気が表裏一体となった、終わりのない夜の始まりだった。