第62章 壊れるほど抱きたい〜時透無一郎【R強】
翌日の朝ーー
窓から差し込む朝の光が、静まり返った部屋を白く照らし出した。
昨夜の激しさを物語るように、床には乱雑に手ぬぐいや衣が散らばり、部屋にはまだ微かに甘く重い空気が停滞している…
身体の芯に残る鈍い痛みと、首筋に刻まれた熱い違和感で、ゆきはゆっくりと目を覚ました…
「あっ…起きた?」
すぐ隣から、無一郎の澄んだ、けれどどこか温度の低い声が降ってきた。
無一郎はすでに身支度を整えつつあったのか、隊服を緩く羽織った状態で、枕元に座り込んでゆきをじっと見下ろしていた…
昨夜の狂気じみた激しさはなく、その表情はいつもの無機質な少年のものに戻っていた。
しかし、ゆきの首筋に残る濃い紅色の歯形を見つめる無一郎の瞳には、隠しきれない独占欲がまだ揺らめいていた。
無一郎は細い指先で、自らが刻んだその痕跡をそっとなぞってきた…。
「まだ、消えてないね…。よかった」
ゆきが身をすくめると、無一郎は少しだけ寂しそうに目を細め、そのまま頬に手を添えた。
「ねぇ、昨日のこと…怒ってる? 痛くしてごめんね。でも、後悔はしてないよ。こうでもしないと、君はまた僕の目の届かないところで、不死川さんや冨岡さんと触れう合うでしょ?」
「そ、そんな…普通に接してるだけだよ!」
「はぁ…。君ってほんとに自覚がないんだよな…」
「自覚?」
「冨岡さんだって結局君が継子になってずっと一緒にいるうちに…身体を許したんでしょ?」
そう言いながら無一郎はとても悲しい表情をして俯いた…。
「無一郎く…ん…」
無一郎は、すっと顔を上げたその表情はすんとした表情に変わっていた。
「とにかく…もう冨岡さんと触れ合わないでね。君はもっと自覚したほうがいいよ。僕の婚約者だってね。」
「だから私はまだ承諾してないよ!!」
「承諾してない?」
無一郎は、ゆきの言葉を繰り返すと、ふっと短く息を吐いた。
それは笑ったようにも、呆れたようにも聞こえる…
ひどく冷ややかな音だった。
無一郎は頬に添えていた手を滑らせた…
再びゆきの首筋にある紅い痕跡を
今度は少し強く指の腹で押し潰すように撫でた。