第61章 任務からの帰還〜時透無一郎 不死川実弥
不死川さんが、泣いている私の涙をぬぐってくれた…。
そして…えっ?待って?待って…
顔が近づいてくる…
くちづけされそうになり顔を斜め下に避けた…
するとすかさず手が顎に伸びて来て顔を上に向かされた。
えっ待って…待って…
ゆきの怯えたような、潤んだ瞳を見て
ギリギリのところで理性が働き、額をコツンとぶつけてくちづけをやめた。
「お前と二人きりになるとどうも調子が狂っちまう」
不死川は、照れた表情で頭を掻きながら言った
「時透、冨岡と、もうどうしょうもなく関係が拗れたら俺の所に来い」
ゆきは、驚いて固まってしまった。
でもすぐに涙を拭いて笑顔を作った…
「ありがとう!不死川さん」
‐‐‐‐‐
蝶屋敷の廊下を照れ笑いしながら不死川は、歩いていた。
すると声がしてきた…
胡蝶の声と……冨岡?
「それで…ゆきさんの前で冨岡さんと仲良さそうにしたらいいのですか?」
「ああ…頼む…」
「私の気持ちはそっちのけなのですね…まぁいいですけど…そのような事で彼女を諦めさせれるのですか?」
不死川は、聞いてはいけない話を聞いてしまった…
「おい…参ったな…冨岡はゆきを諦めようとしてるのかよ…それとあの感じじゃゆきは冨岡を好いてるのか…」
ゆきは、夜風に当たりたくなって部屋を出た。
夜の蝶屋敷の中庭は、月明かりが青白く降り注ぎ、しんと静まり返っていた。
ゆきが声がする方へ足を進めた…
義勇としのぶが隣り合って座っていた。
いつもは一定の距離を保つはずの義勇が、今はしのぶの肩が触れそうなほど近くにいた。
義勇は、しのぶの話に深く頷きふっと微かな笑みさえ浮かべて見せる。
しのぶは 楽しげに鈴を転がすような声で笑っていた。
物音に気づいたふりをして、義勇がゆっくりと振り返ってきた。
その瞳は、ゆきが知っている青く澄んだ優しい眼差しはなく、氷のような冷ややかさだけが残っていた。
「……何をしている。夜風は体に毒だ。早く部屋に戻れ婚約者の時透が心配するぞ」
その一言は、ゆきが一番触れられたくない現実を突きつける言葉だった。
自分ではなく、無一郎の隣にいるべき人間なのだと、義勇は言葉を使わずに告げてきた…
「ご、ごめんなさい…」