第61章 任務からの帰還〜時透無一郎 不死川実弥
義勇さんが、怒って出て行ってからずっと無一郎くんは不機嫌だった。
私は…今まで稽古や任務で忙しく読めていなかった本を読んでいた。
すると無一郎に本を取り上げられた。
「何するの?」
「ずっと本ばっかり…」
「なかなか読む機会がなかったから…」
無一郎は、いきなりゆきのベッドに入ってきた。
「えっ?ちょっと待って無一郎くん」
「大丈夫だよ。昼寝するだけ」
「で、でも誰か入ってきたら…」
「僕達婚約してるからいいでしょ?」
ゆきの表情が変わった
「その事なんだけど…私は婚約を承諾してないよ?」
無一郎は、ベッドの上でゆきを組み敷いた。
「何それ?」
「無一郎くんが勝手に話を進めたんだよ…」
「君は僕を好きじゃないの…?」
真っ直ぐな目で私を見てくる…私は…今の気持ちを伝えるべき?
「わ、私は…」
無一郎は、くちづけしてゆきの言葉を遮った。
唇を離した時に無一郎が小さな声で言った…
「僕の事嫌いにならないで…」
すごく弱々しい声だった…
無一郎は、ベッドから出て部屋を後にした。
夜…一人誰も居ない療養室ゆきは、ずっと無一郎の事を考えていた。
あんな悲しそうにされたら…私…
その時部屋の入り口から物音がした。
「誰?…しのぶさん?」
返事はなかった…ベッドから出て恐る恐る物音がする所まで歩いた…
後ろから誰かに口元を覆われた。
驚いて顔を見ると不死川さんだった。
「悪い…大声出されそうだったから口塞いじまった。」
不死川さんは、たまたま蝶屋敷に用事があって帰る時に私が怪我をした事を聞いて来てくれたらしい。
「時透は任務か?」
「はい。」
「…お前さ、時透と冨岡でずっと心が揺れてるだろ?」
「えっ…?」
思わずベッドで隣に座る不死川さんを見た。
「時透にいったり冨岡にいったりしてるんだろ?」
不死川さんは、私のズルい部分を普通に突いてくる。
「あの…私は…本当に二人に甘えてズルいんです…」
ゆきの顔を見ると潤んだ瞳から涙が溢れ出ていた。
「いや、泣かすつもりはなかったんだ…」
「不死川さん…こんな私って最低ですよね?」
そんな潤んだ目で見てくるんじゃねェよ…前にも思った…
時透の気持ちも冨岡の気持ちもわかるって…