第58章 悲しい年の瀬〜時透無一郎 冨岡義勇
ゆきは、一人無一郎の部屋で寝転がり天井を見上げていた。
婚約は、もう決定した事になってるのかな?無一郎くんは、私に確認を取らずお館様に報告に行ったんだよね?
きちんとお館様が、どう仰っていたのか聞いてない…
お館様は、認めたのかな…
義勇さん…ずっと余所余所しい…当然だよね。
でも今日羽織を貸してくれた…義勇さんの匂いがした。
ゆきは、目を閉じた…
今日は、ゆっくり眠れる…
おやすみなさい…義勇さん…
朝方苦しくて目が覚めた。
目を開けると、隊服姿の無一郎がゆきのお腹に手を回し、足を体に絡め眠っていた。
よく見ると隊服が汚れていた。
任務が大変だった事がすぐに伝わってきた。
酷く疲れているみたいで、起きる素振りはなかった。
すやすや眠る寝顔には、まだ幼さが残っている…
まだこんなに可愛いらしいのに、柱としての重圧に日々涼しい顔で耐えているんだと考えると胸が苦しくなった。
無一郎くんの御両親は、いつ亡くなったんだろう?そんな話も私は聞いてない…
お兄さんの話は少しだけ時々話してくれるけど…無一郎くんの過去を詳しく知らない…
だけど今天涯孤独の身になっている…私と同じ…
そんな事を考えながらすやすや眠る無一郎くんの髪に触れた。
「う〜ん」
無一郎くんが、声をあげたので髪に触れる手を止めた。
ちょっと寝苦しそうな顔をしたけどすぐに私を抱きしめ直してきて、またすやすや寝始めた。
‐‐‐
無一郎くん全然起きないな…
私そろそろ用意しないと稽古に間に合わないんだけど…でも起こしちゃうのは可哀想だし…
無一郎くんは、任務の後だから今日は一日休息日よね…。
大変だっただろうから起こしたくないな…
ゆきは、ゆっくり無一郎の腕の中から逃れようとした…が
ぐいっと引っ張られて抱きしめられた。
どうしよう…お稽古行けないよ…
‐‐‐‐
義勇の屋敷では稽古は始まっていた。三田達も任務から帰って来て今日から参加していた。
「柱、今日はゆき来ないんですか?」
隊士の中村が義勇に質問した。
「いや、来るはずだが遅いな…」
昨日の任務寒かったから体調崩したのだろうか?心配だ…
「寛三郎、時透の屋敷に行ってゆきの様子を見てきてくれ」