第54章 十二月の朝〜時透無一郎 冨岡義勇【微R18】
次の朝…
いい匂いでゆきは、目が覚めた。
「ゆきおはよう!早くおいで藤の家の方が美味しそうな朝ごはん用意してくださったんだよ」
目をこすり眠そうに、僕の事を見るゆきがとても可愛かった。
「あっ無一郎くんの好きなおかずもあるよ。」
「うん!兄によく作ってもらったなぁ…」
無一郎くんの顔見ると少し寂しそうな表情をしていた。
「兄には迷惑かけちゃったな…僕は一人で米も炊けなかったからね。」
「でも、お兄さんは無一郎くんの事大好きだったはずだよ。」
ゆきのその言葉は、僕の胸に響いた…。いつもゆきは、僕の心を癒してくれる…。
離したくない…
誰にも渡したくない…
「ゆき隣においで」
「え?食べてる途中だよ…」
「いいから来て」
ゆきは、言われるがまま無一郎の隣に座った。
「昨日不死川さんが言った事は覚えてる?」
「それは…覚えてる…無一郎くんが凛を好きって…」
無一郎は、ゆきの両手を握った。
「今日一緒に屋敷について来て…君の見ている前で凛に屋敷から出てもらう。きっぱりけりをつける」
「む、無一郎くん…」
無一郎は、自分の方にゆきの両手を引いた…そしてしっかりと抱きしめた。
「鬼が居なくなったら僕のお嫁さんになって…」
ドキドキする…鼓動が速くなる…お嫁さん…無一郎くんの?
無一郎が、返事がないゆきを見た。
「考えておいてね。お嫁さんになる事」
無一郎の唇が、ゆきの唇に重なった…。
「んっ…」
無一郎は、ゆきの唇を何度も甘く噛みながらくちづけをした。
そしてまたぎゅっと抱きしめた。
無一郎くんの愛の重さにやっと気付いた。
とても嬉しかった…嬉しかったのに…すぐに返事を出来なかった。
それは…頭をよぎったから
義勇さんの顔が…
義勇さんの声が…
義勇さんの抱きしめられた時の感覚が…
知らないうちに、こんなにも義勇さんの存在が私の中で大きくなっていただなんて思いもよらなかった。
自分がわからなくなってきた
無一郎くんに、抱きしめられる感覚も好き、顔に触れる長い髪の感覚も好き
無一郎くんの匂いも好き
なのに…義勇さんも恋しくなる
そんな自分の気持ちに気付いた十二月の朝だった