第53章 十二月の夜〜冨岡義勇【微R】
バンッ//////
義勇は、あっと言う間に三田の竹刀を飛ばしていた。
地面に、ふっ飛ばされた三田にゆきが駆け寄った。
「大丈夫?三田さん?」
ゆきは、心配そうに三田に寄り添っていた。
義勇は、何も言わず道場を出て行った。
「今日の柱なんか違うよな?ピリピリしてるよな?」
他の二人の隊士が折れた竹刀を片付けながら話していた。
今日は、夜にまた街に巡回の任務があった。
義勇とゆきは会話もなくただ街を歩いていた。最近は、鬼の出現も落ち着いており穏やかな日々が続いていた。
露店の店主が、義勇に声をかけてきた。
「二人は恋仲かい?この子がこの髪飾りを歩きながらじっと見てたよ…買ってあげなよ?」
「み、見てたけど別に欲しくないです!綺麗だなって…い、行きましょう」
義勇は、慌てるゆきをよそにその桜色の髪飾りを手に取った。
「ではこれをくれ。」
義勇は、髪飾りを買ってゆきに渡した。
「あの…義勇さん…これ」
義勇は、ぼそっと言った。
「怒ってすまなかった。洋服の事…似合っていた。欲しかったんだろ?あの洋服この前の任務の時…独り言を聞いていた。」
「えっ?」
空から雪が降ってきた…。キラキラ商店の明かりや街灯に照らされて綺麗だった。
「最近なぜ時透の所へ行かないんだ?」
「それは…まだ…無一郎くんが凛を屋敷に置いているからと、後ろめたいからです」
「…そうか。」
そう無一郎くんは、まだ凛を屋敷に置いてあげている。
しのぶが、薬を盗んだ罪として凛と両親を遠くの街に行ってもらおうとした所、凛が嫌がりご飯も食べなくなり病んでしまい可哀想に思った無一郎が、また屋敷に置いてあげることにしたのだった。
「あの夜は何も無かっただから後ろめたく思うな」
「でも…」
義勇にいきなり抱きしめられた。
「ぎ、義勇さん?」
時透がお前を大事にしないのなら…俺は我慢しなくてもいいのではないか?
黙ったまま何も言わない義勇をゆきは、押し退けた。
「すまない…何も無い」
義勇は、また何事もなかったかのようにゆきの少し前を歩き始めた。
義勇さんはあの夜の事を無かった事にしてくれようとしてるけど…体が覚えてる