第49章 無視〜冨岡義勇 時透無一郎
「無一郎くん!!」
無一郎は、蝶屋敷の縁側で本を読んでいた。
「あれ?ゆき?なんで」
足をよたよたしながら歩いて来るゆきを見てすぐに悟った。
「足怪我したの?昨日来なかったし…」
ゆきは、無一郎の胸の中に飛び込んだ。
「挫いちゃって…しのぶさんに無一郎くんの屋敷に当分行ったら駄目だって…」
無一郎は、ゆきを膝の上に座らせて抱っこした。
「会えないなんて嫌だな…不安になる」
ゆきを、ぎゅっと抱きしめた。
「なぜここに居るの?」
「それは…凛が体調悪いって言うから連れてきた」
ゆきは、無一郎の首に手を回してぎゅっと抱きついた。
無一郎の読んでいた本の間にある栞に目がいった。
「押し花の栞だ…かわいい」
無一郎は、ゆきの耳に軽くくちづけをしてから話しだした。
「それは、君がくれた花束を押し花にしたんだ」
ゆきは、ますますぎゅっと無一郎に抱きついた。
「嬉しい…大好き」
無一郎は、首筋を吸って跡を付けた。
「だ、ダメだよ無一郎くん…」
「ゆきの甘い香りに酔ってきちゃった。」
顎を手で持たれて、くちづけをしてきた。
「ゆき口開いて舌を出して」
言われるがままにそうした…私の舌を食べるように無一郎くんの舌もまとわりついてくる!
そんな様子を義勇は陰で見ていた。
義勇は、ますます嫉妬心とゆきに対してイライラをつのらせていった。
「もういいですか?ゆきお姉様?」
凛の声がしてきた。義勇はとっさに身を隠した。
ゆきは、その声に慌てて無一郎を押し退けた。名残惜しそうに無一郎は、唇を親指で拭った。
「無一郎くん、診察終わったから帰ろう」
ゆきを、押し退けて凛は無一郎と腕を組んだ。
無一郎は行ってしまった。
どうして、無一郎くんは凛と一緒に居るのかな?いつまで屋敷に置くのかな?
私は、無一郎くんのいったい何なのかな?
義勇の横を無一郎と凛が通り過ぎて行く
確かに、凛と言う娘の懐から瓶の蓋が見えた。
胡蝶の言うように、ちょくちょく幻覚の薬を盗みに来ているようだった。
縁側に一人残されたゆきを見た。涙をぽたぽた落としていた。
俺にしないから泣くんだ…