第46章 幻覚の正体〜冨岡義勇
「凛が君に話したみたいだけど、僕は凛を抱いた」
私は聞いて胸がぎゅっとなった…
「ただ、君と同じように幻覚を見たんだ…僕もゆきだと思って抱いたんだ。ゆきの声、ゆきの仕草全部同じだったから…信じて疑わなかった。」
ゆきの背中に回した手に力が入った。
「会いたくて仕方なかったんだ。ずっと君の事を考えてた。冨岡さんと抱き合ってないか、くちづけしていないか…気になって気が狂いそうだった。そんなある日君の幻覚を、見たんだ鮮明な幻覚を…」
「無一郎くん…」
「現実には凛を抱いたかもしれないが、心は君を抱いていた。君しか僕には見えてないから…」
「私だって…無一郎くんに抱かれた…無一郎くんだったの私には」
「僕はもう惑わされない…」
無一郎は、きつくきつくゆきを抱きしめた。
そんな二人の会話を、義勇は聞いていた…。
もしかして、時透も幻覚を見る薬を凛に飲まされていたのか…
そして、凛はゆきとなり自身を時透に抱かせたのか…
ゆきを抱いた相手を、ゆきも時透もあの隠だと勘違いしている訳だな…。
だから屋敷に、急に時透が乗り込んできたりゆきが、あの夜自分を誰が部屋に連れて帰ったか聞いてきたのか。
俺は…打ち明けた方がいいのか…
あの隠は、お前に何もしていない…
あいつが、少し前からお前に密かに好意を持っていたのは俺は勘付いてはいた。
だが、あの隠は本当にそれだけだ。
仕事もきちんとこなす良い隠だ。
俺が、抱いたと知ればもっとお前の心は離れて行くだろうな…。
それこそお前は、俺を汚く感じるんではないのだろうか…
その後無一郎は、ゆきと少し抱き合って任務があるので自身の屋敷に戻って行った。
ゆきは、稽古をしに道場に向かった。
すでに、義勇が真ん中で正座をして目を閉じてゆきを待っていた。
「師範遅くなりました」
ゆきも、木刀を横に置き義勇の隣でそっと
正座をして静かに、目を閉じた。
静かな物音がしない空間で二人は目を閉じた。
「ゆき…」
静かに義勇が、口を開いた
「はい」
「あの晩お前は、時透の幻覚を見ただろ?」
ゆきが、ハッと目を開いた