第44章 消えた薬〜冨岡義勇 時透無一郎
夜になり義勇とゆきは屋敷に戻ってきた。
「今日は、すまなかった…結局嫌な思いさせただけだった…」
義勇が、部屋に戻るゆきに申し訳なさそうに言った。
「義勇さんに、私はいつも助けられてます…ありがとうございます。」
目は合わしてくれないがそう言ってゆきは部屋に戻って行った…。
〜〜
無一郎は、あの日の夜の事を思い出していた…。
あの夜…
僕は、ゆきが冨岡さんの屋敷に行ってしまってから数日たち嫉妬に狂いそうだった。
四六時中ふたりが、抱き合ってないか?口づけを、していないか?身体を重ねていないか?気になって気になって眠れないし心が穏やかになれなかった。
そんなある日に、凛が心が落ち着くお茶があると言い僕は、それを飲んだ…。
確かに、気持ちは楽になった…
と、同時にずっと会いたかったゆきが、夜に僕の目の前に現れた。
僕は、疑いもせずに夢中でゆきを抱いた。会いたかった君が、僕の腕の中に居ることがたまらなく幸せだった。
翌朝異変に気づいた。隣に眠るゆきを離したくなくてぎゅっと抱きしめた時に、いつもと感触が違うことに気づいた。
慌てて目を開き見てみると、裸で眠っていたのは、凛だった…。
僕は、間違えて凛を抱いた…。会いたいと強く願ったからか、わからないがゆきの幻覚を見ていたのだ…。
だから合わせる顔がなくてゆきに、素っ気なくしてしまった。
「無一郎くん入るよ」
凛が、部屋の入り口にお茶を持って立っていた。
「何?」
「あ、あの…よかったら寝る前に飲んで…今日は、色々あって疲れただろうから…」
無一郎は、凛を無視した。凛は、入り口にそっとお茶を置いて出て行った。
イライラした様子の無一郎は、お茶を一気に飲み干した。
〜〜
義勇は、今日しのぶから聞いた話の事を考えていた。
『無くなった薬なんですが…凛さんが怪しいと思うんです。うちの蝶屋敷の子が、薬の瓶を持ってキョロキョロする凛さんを見たと言うのですよ…』
そんな事を、考えていた時にふすまの向こうからゆきの声がしてきた。
「あの…師範。湿布薬貼り替えに来ました。」
ゆきが、律儀に湿布薬を貼り替えに来たくもないだろうに、俺の部屋を訪ねてきた…。