第44章 消えた薬〜冨岡義勇 時透無一郎
「病室ですよ!?何をしているんですか?」
床に、尻もちをついた凛が半分泣きそうになっていた。
ゆきの様子がおかしかった。
「ゆき!?どうした?」
義勇が、無一郎を押し退けてゆきの元に駆け寄った。
肩で息をして、胸に手を当て過呼吸になっていた。
義勇は、優しく背中をさすった
「落ち着け…ゆっくり呼吸しろ」
ゆきが、辛そうにしている…僕のせいだ…僕がまたゆきを傷つけた…。
ゆきは、ぐったりしながら義勇に寄りかかった。周りに構わずに、ぎゅっとゆきを抱きしめた…。
消えそうな声で、少しだけニコッとゆきは笑って「ありがとうございます…」
と俺に言った…。
床に尻もちを付いて倒れている凛が無一郎に甘えだした。
「無一郎くん足を挫いたかも…抱っこして欲しい」
ゆきが、落ち着いてきたのにまた台無しにするような事を言う凛を、義勇は睨んだ。
すると腕の中のゆきは、俺の隊服をぎゅっと握りはじめた。
無一郎は、そんな凛を無視して部屋から出て行った。
しのぶが、凛の前にしゃがんだ。
「足を挫いて痛いのですね?今夜はここに泊まってください。足が良くなったら時透さんのお屋敷に戻りましょうね」
凛は、焦りながら「だ、大丈夫みたいです」と言い自分で歩いて無一郎の後を追って行った。
「冨岡さんゆきさんが落ち着いたらちょっとお話したい事があるので、居間にいらしてください」
しのぶは、部屋を出て行った。
暫くゆきは、黙って義勇の腕の中にいた…。
義勇も、何も言わずにずっと抱きしめたままだった。
「…義勇さん…落ち着きました ありがとうございます…」
ゆきが、上目遣いで俺を見ながら礼を言ってきた…。
でも、目線は外していた…。
どこか、俺の後ろの方を見ながら言っていた。
「そうか…では胡蝶の所に行ってくる。帰る時にまた迎えに来るからもう少し横になっていろ」
優しい義勇さん…。いつも、いつも優しくしてくれる。
有り難すぎるし私には、あなたは勿体ないです…。
ゆきは、横になりゆっくり目を閉じた…。
〜〜
「無一郎くん!待って」
無一郎は、振り返ることなく家路を急いだ。凛は、一生懸命後を追った。