第43章 新たな波乱〜冨岡義勇 時透無一郎
屋敷に義勇とゆきは、帰ってきた。
「以前使っていた部屋はそのままにしているからそこを、使え」
「ありがとうございます」
それだけゆきは、言って部屋の方へ歩いて行った。
『まったく俺の目を見てくれない…』
ゆきの避け具合が、義勇にはすごく堪えた。
一緒に食事する時も、会話もないもちろん顔すら見てくれない。
義勇は、少しモヤモヤしながら廊下を歩いていた。
縁側に、お風呂あがりのゆきが座っていた。
かわいい横顔…俺はゆきの浴衣姿が好きだ…隊服を着ている時と違って表情が柔らかい…。
時透の元に居たお前が、今手が届くすぐそこに居る…。
気がついた時には、俺はゆきを後ろから抱きしめていた。
ゆきは、驚いてすぐにもがいた。
「やめてください!義勇さん」
義勇の力は強く、腕の中から逃れられない。
「ゆき」
耳元で、義勇は囁く…
「義勇さん、離してっ」
義勇は、ゆきの耳に唇を当てていく…。
「師範!!」
義勇の腕が、一瞬緩んだ…
その隙に、ゆきは義勇の腕からすり抜けて部屋に走って行った。
義勇は、その場に座り込んだ
「俺は、何をしているのか…」
〜〜〜
次の日の朝は、変わらず普段通りのゆきの姿が道場にあった。
俺が、稽古を付けている間は俺の顔、目をしっかり見て話を聞いてくれた。
しかし、食事や休憩中は一切目が合わなかった。
時透に、何か言われているのであろうか…?
それか、時透の屋敷であんな抱き方をしたから嫌われているのか…
そんな日々が一週間ほど続いた…。
手合せをしている時に、義勇が気を取られてしまいゆきの放った竹刀を左手腕に、もろに受けてしまった。
「し、師範!?大丈夫ですか?」
ゆきが、泣きそうになりながら慌てて義勇に駆け寄った。
オロオロしながら腕を、さすっている。
「心配ない…考え事をしていた」
よろけた義勇を、ゆきは抱きとめて支えた。
義勇からしたら何日か振りにゆきに触れた…。
部屋に戻りゆきが、俺の腕を手当てしてくれた。
打撲の痛さが無くなるくらい触れられる度に心臓が高鳴った…。
それに、おれの目を見て心配そうにしてくれた。