第37章 甘い誘い…〜冨岡義勇 時透無一郎【R強】
無一郎はゆきを置いて屋敷を出た。しばらく歩いて遠くの場所から屋敷の方を見ていた…
「冨岡さんが来なければゆきの元に戻ろう…」
暫く時が過ぎたが冨岡さんが現れる気配がなさそうと思い無一郎は、ゆきの元に戻ろうとした…
「時透」
「え?」
無一郎は、その声に驚き振り返った。
「こんな所で自分の屋敷を眺めて何している」
義勇が立っていたのだった。
「冨岡さんこそこんな夜更けに何しているの?」
「…。」
「ゆきに会いに来たとか?」
「時透が蝶屋敷に戻るのならお前の屋敷にゆき一人は心配だから俺のところに連れて行く」
「何それ?行かないですよ。ちょっと夜風に当たりに来ただけ…では…」
夜風に乗って時透からゆきの香りがした…
これが時透の言っていた俺からしていた匂いなのか…
今理解した。抱き合って…触れ合っていたら移るんだな匂いが…
時透からゆきの香りが漂う…
想像してしまうじゃないか?さっきまで何をしていたかを…。
屋敷に戻る時透の後ろ姿を見て俺は胸が締め付けられた。
〜〜〜
無一郎が屋敷の中に入った時に、何か違和感があった…。
自然と刀に手を置いていた。
その時刀を手に持ったゆきが、ふすまごと飛ばされてきた。
「ゆき!?」
奥を見ると鬼が立っていた。見るところ下弦程度の鬼と見受けられた。
無一郎は、素早く呼吸を整えた
「霞の呼吸…」
瞬く間に頸を跳ねた。
「ゆき大丈夫か!?」
「無一郎くん…良かった戻ってきてくれて」
ゆきは、浴衣姿でぐったりしていた。ケガはなさそうだった。
「裏口から物音がして無一郎くんが帰ってきたと勘違いして開けちゃったの…そしたら鬼だった…」
無一郎はゆきを強く抱きしめた。
「ごめんねゆき」
「ううん。私がきちんと確認しなかったから…悪いのは自分だから」
無一郎が震えるゆきの背中をさすってやった。
「鴉を飛ばしたから、もうすぐ隠しが事後処理に来る。だから安心して部屋で休むといいよ。」
「あ、ありがとう」
「僕も隣に居るから安心して」
ゆきのこの怯え方…どこかおかしいと無一郎は感じた。