第23章 僕の名前を呼んで〜時透無一郎【R18】
義勇の元へ稽古に行こうと屋敷を出ようとした時に無一郎に呼び止められた。
「もう行くの?」
「はい。ちょっと早めに出ようかと思いまして」
「ふーん」
ゆきが、足を進めようとした。
「冨岡さんに早く会いたくなったの?」
無一郎の言葉に目を見開いた…。
「昨日、義勇さんって寝言言ってたよ」
ゆきの、心臓が波打つ…。夢を思い出す…淫らな夢だった…私がまた義勇さんとそうなりたいから?
見た夢だったの?
「い、行ってきます」
無一郎はゆきの後ろ姿をずっと見ていた。
行かせたくなかった。また自分の継子にゆきを戻したかった。
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ゆきは、義勇と屋敷近くの広場で手合わせをしていた。
実践さながらの稽古だったので気を引き締めていた。
「もっと押してこい腰が引けてるぞ!」
「はい!」
義勇さんの動きが、早すぎてついていけない…
それに昨日の夢を思い出してしまう…。
だめだめ、邪念を抱いては…
「キャッ!!!!!!」
竹刀が飛んでいき体が吹き飛ばされ広場の囲いに激突しそうになった所を義勇が抱きかかえ助けた。
「何を考えている!怪我するところだっただろ!」
義勇は珍しく声を荒らげて怒鳴った。
「ごめんなさい…」
涙ぐみながら謝るゆきが愛おしすぎた。俺は一度
ゆきに大怪我をさせている。だからもうそんな痛い思いをさせたくない。
少々声を荒らげてしまった。また嫌われたかな…
「もう大丈夫なんで降ろしてください」
義勇は、ゆきを抱きかかえたままだった。
「いや、、、もう少しこのままで」
私を見つめる義勇さんの眼差しが熱い…くらくらと酔いそう…
えっ…まって近づいてくる…
「ぎ、義勇さん?」
昨日百合に叩かれて切れた唇の端にそっと触れた。
「痛かったな」
あぁ…義勇さん
私がずっと忘れている記憶の向こうに居るのはあなたなの?
時透さんの顔が浮かぶけど、あなたにこうして触れられて優しい言葉をかけられると胸がぎゅっとするの…。
忘れている記憶は何なの?
「手合わせ中に、何してるんですか」
声の主は、無一郎だった。
「何してるの?ニ人して」
ゆきは降りようと足をバタバタしたが、義勇は抱きかかえたまま離さなかった。