第105章 無一郎と美月の仲〜時透無一郎
「足、怪我されているじゃないですか…! 手当てをしますので、背中に乗ってください!」
振り返ると、そこにいたのは鬼殺隊の隊服に身を包んだ、すらっとした長身の男…違う…女性が立っていた。
ゆきを整った顔立ちのその女性は、心配そうに見ていた。
「…大丈夫、です。これくらい…」
立ち尽くすゆきが弱々しく首を振ると、隊士は真剣な眼差しで畳みかけるように言った。
「大丈夫なわけありません! 裸足ですし、そんなに悲しそうな顔をされていては…絶対に置いていけません!」
その強引で温かな突拍子もなさに押され、断る間もなく背中に負ぶわれた。
自分の痛みにすら無頓着になっていた胸の奥に、見知らぬ隊士の真っ直ぐな温もりがいまさら沁み渡っていくようだった…。
「自分は、幸(さち)と言います。実はこれから、私を継子にしてくださる師範のお屋敷に向かうところなんです。そちらで傷の手当てをして、お話も聞ききますね!」
パタパタと軽快な足音を響かせ、幸は前を向いて歩き出した。
元気で明るい幸に、ゆきは少し元気をもらえた。
無一郎の心は自分から離れてしまったのではないかという不安。
昨夜のぬくもりも、今朝の哀しげな眼差しも、すべて思い違いだったのかもしれないという恐怖。
無一郎を想う事が、何だか怖くなりゆきはそっと瞳を閉じた。
どれほど歩いただろうか。やがて幸の足が止まった。
「着きましたよ! ここが私の師範のお屋敷です!」
幸の声にゆっくりと目を開けたゆきは、息をのんだ。
視線の先に佇んでいたのは、見覚えのある屋敷…かつての私の師範の屋敷…そう冨岡義勇の屋敷だった。
運命の悪戯のように…
皮肉にも、新しく義勇の継子となる幸の手によって、ゆきは再び義勇の元へと導かれてしまったのだった。