第105章 無一郎と美月の仲〜時透無一郎
「どこに行ったの…ゆき…!」
その頃無一郎は、手当たり次第にゆきを、探し回りながら、荒い息を吐いていた。
初めは追いかけるつもりなんてなかった。
しかし玄関にぽつんと残されたゆきの草履を見た瞬間、胸が抉られるように痛んだ。
裸足で外に出るなんて…怪我をするに決まってるじゃないか。馬鹿じゃないの…
美月への迷いを胸に抱きながらも、結局は土壇場で一番失いたくないと思うのは、いつだってゆきの存在だった。
「どこにいるんだよ…頼むから、僕の前から消えないで…」
ーーー
怪我をしたゆきを心配しておぶってくれた鬼殺隊士・幸は、ある屋敷の門前にたどり着いていた。
運命の悪戯か、そこは義勇の屋敷だった。
ハッとして息をのむゆきを背中に乗せたまま、まるで見た目が青年のような幸は、元気に声を張り上げる。
「すみません! 今日からお世話になります。水柱様の継子として参りました、幸と申します!」
静かに扉が開かれ、静かに義勇が現れた。
その深い藍色の瞳が幸を見つめ、次いで、彼女の背中で足から血を流し身を縮こまらせているゆきをとらえた。
義勇が目を見開く…。
無一郎のもとへ戻ったはずの彼女が、なぜ靴も履かず傷ついてここにいるのか?
「…ゆきなぜ…怪我を…」
低く落ちついた声で名を呼ばれ、ゆきの時が固まったように止まった。
溢れ出そうになる涙を必死に堪えながら、ただ息を詰まらせて義勇を見つめ返すことしかできなかった。
義勇は、すぐにゆきを横抱きに抱えた。
「素足で何を、している?時透は?…いやっ、それより手当だ!出血が酷い。」
義勇は、慌てながら隠を呼び寄せた。
継子になる幸を、隠に任せてゆきを抱えたまま義勇は、屋敷の奥に消えていった。
その様子に、幸は驚いていた。
隠が、説明をする。
「ゆき様は、最近まで柱の継子だった方なんですよ。」
「えっ!?あの子そうだったんですか?」
「今は霞柱時透様の婚約者になられました…。霞柱様のお屋敷にお住まいです。」
「か、霞柱様の婚約者…」
「さっ、幸様お部屋へご案内致します」
動揺を隠せない幸は、隠に連れられ新しく生活する部屋へと案内された。