第104章 護衛〜冨岡義勇【R強】
迷った末、ゆきはひとつの答えを胸に決めた。
自分の汚い感情で、この人を縛るわけにはいかない。
「…義勇さんは、新しい継子の方を迎えてください」
どうか、私のことなど忘れてください…。
私に大切な時間を割かないで…。
義勇さん
「私なんかのことは、どうか忘れてください。…今まで、出来の悪い継子で申し訳ありませんでした。新しい継子の方を、大切にしてください。」
身を引くことが、自分にできる唯一の誠意だと思った。
ゆきの言葉を聞いた瞬間、義勇の碧い瞳に影が落ち、その表情が切ないほどの悲しい色に変わっていく…。
義勇は、しばしの沈黙の後口を開いた
「…そうか。分かった。継子は、迎え入れよう」
義勇は静かにそう呟くと、一度言葉を区切った。
しかし、顎に触れていた指先を離そうとはしない。
その瞳には、なおも切実な光が宿っていた。
「継子は迎え入れる。だが、まだ肝心の答えを聞いていない。さっきこの話を聞いた時、お前は……嫌だったか?」
胸を刺すような問いに、ゆきは誤魔化す術を失い、じっと義勇を見つめ返した。
嘘をつくことすら叶わないほど、彼の眼差しはまっすぐだった…。
「……嫌でした」
ゆきのぽつりと零れ落ちた本音に、義勇の目が大きく見開かれる。
思わぬ返答に動揺を隠せず、義勇の胸が激しくざわついた。
その隙を見逃さず、ゆきはそっと視線を外した。
「…食事に行っても、いいですか?」
呆然と放心状態になった義勇の腕から抜け出すのは、驚くほど簡単だった。
温かな拘束からあっけなくすり抜けると、ゆきは振り返ることなく、義勇を部屋に残したまま食堂へと足を向けた。
「嫌ならなぜ、継子を迎え入れろと言うんだ…。なぜお前を、俺から忘れさそうとする?俺は、お前を時透から掻っ攫ってもいいと本気で思っている。」
義勇は、誰もいない部屋で一人悲痛な胸の内を言葉にしていた。