第104章 護衛〜冨岡義勇【R強】
義勇の大きな手のひらが、そっと頬を包み込む。彼の親指が、ゆきの目から溢れ落ちた大粒の涙を優しく、愛おしそうに拭った。
その体温に触れた瞬間、胸の奥の痛みが甘い苦しさに変わっていく。
しかし、義勇の顔はさらに吸い寄せられるように近づいてきた。
見つめ合う互いの吐息が完全に重なり、唇が触れ合う…その寸前だった。
「失礼します! ゆき様、お食事が冷めてしまいますので、食堂の方へお越しください」
突然静寂を破った隠の声に、ゆきはハッと我に返り、驚きで心臓が跳ね上がった。
我を忘れて義勇の胸に手をかけ、必死にその身体を振り払おうとする。
しかし、義勇の腕は固く、びくともしない。それどころか、さらに強引に壁へと押しつけられてしまった。
「ゆき様…?」
襖の向こうから、返事のない室内の様子を不審に思った隠の、心配そうな声が漏れ聞こえる。
しかし、義勇は容赦なくゆきの顎を捉え、その顔を上向かせた。
見上げる義勇の瞳は、熱を帯びて激しく揺れている。
このままじゃ、外の隠に襖を開かれ見られてしまう…
焦ったゆきは、必死の思いで襖の向こうの隠へ向かって声を張り上げた。
「すぐ行きま…ん、っ…!?」
言い終えるよりも早く、義勇の唇がゆきの言葉を強引に塞いだ。
それは、独占欲を剥き出しにした口づけだった。
襖の向こうで一瞬、息を呑む気配がした。室内のただならぬ空気と、遮られた声の意味を瞬時に察知した隠は、「し、失礼しましたっ!」と慌てた様子で、まるで逃げ出すように廊下をドタドタと走り去っていった。
遠ざかる足音を聞きながら、ゆきは残った力を振り絞り、義勇の胸を思いきり押し退けた。
ようやく離れた唇。荒い息を繰り返しながら、ゆきは赤くなった顔を強張らせて義勇を睨みつける。
「な、何するんですか…!?」
「つい…頭に血が上った…悪かった。」
義勇は、そう言って壁に押さえつけていたゆきの手をゆっくりと解放した。