第104章 護衛〜冨岡義勇【R強】
義勇さんが、どんどん近づいてくる…どうしよう…
逃げ場をなくしたゆきは、これ以上義勇の真っ直ぐな瞳を見ていられず、ぎゅっと目を閉じた。
視界を閉ざしても、近づいてくる義勇の体温と気配が、肌を刺すように伝わってくる。
沈黙の中、義勇は切ない、今にも泣き出しそうな声を振り絞るようにして口を開いた。
「お前以外…継子は取らないと、心に決めていたんだが…。鬼の出現が無くなった今だからこそ、次の世代を育てて欲しいとお館様に頼まれて…新しく、継子を取ることになった」
予想もしなかった言葉に、ゆきはゆっくりと目を開けて義勇を見つめた。
義勇は、胸が締め付けられるほどに悲しそうな顔をしていた。
「お前と同じ…年齢の、女性の隊士らしい」
その事実に、胸の奥がズキリと痛んだ…。
胸が痛い…何で?もしかして…私…嫉妬しているの?
義勇さんに、新しい継子が出来ることに…
勝手に意地悪な言葉が、出てくる…
「なら…私が、あの時お返ししたあの羽織を、その方に渡せますね。私との繋がりもなくなりますね。」
ドンッ! と、激しい音が鼓膜を叩く。
「……!?」
義勇は、ゆきの顔の横の壁に、勢いよく手を突いていた。
心臓が跳ね上がる。至近距離で見下ろしてくる義勇の瞳には、明らかな焦りと怒りが滲んでいた。
「本気で言っているのか…?」
「はい…お返ししたので私のものではないので」
怯えながらも言い返すと、義勇は悲痛な声を張り上げた。
「あれは…お前の為だけに仕立てた羽織だ!お前の羽織だ!」
息が触れ合いそうな距離で、義勇は秘めていた本音を零すように続けた…。
「お前が継子を辞めて、俺の元を去ったあの日から…俺は、毎晩…あの羽織を、お前だと思って、胸に抱いて眠っている…」
「えっ…?」
その告白に、ゆきの胸がギュッと苦しくなる…。
「お前が、隣で一生懸命稽古をしているのが当たり前だった。時透と婚約しても、俺はお前の師範で側でいれるだけでも良かった…。だけど、あの日急に継子を辞めると言われ…立ち去られて…手元に残ったのはお前の羽織だけだった…。」
義勇は、壁についた手をゆっくりとゆきの頬に移動させ手のひらで包んだ。
ゆきの目からは、大粒の涙が流れていた。