• テキストサイズ

鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎 冨岡義勇★R18

第104章 護衛〜冨岡義勇【R強】


食事を終えた義勇が席を立とうとした、その瞬間

私の胸の内に、複雑な葛藤が渦巻いた。

一度は彼への恋心をきっぱりと断ち切ったはずだった。

それに、今の私には時透無一郎という婚約者がいる。

刀鍛冶の里での出来事以来、彼とは気まずい空気のまま距離を置いてしまっているけれど、私の立場は変わらない…。

それなのに、昨日見せた義勇の切ない瞳や、先ほどの茸をめぐる不器用な優しさが、心の奥底に沈めたはずの記憶を容赦なく揺さぶってくる。

いけないと思えば思うほど、気まずい沈黙に耐えかねて、ゆきは逃げるように言葉を紡いでいた。

「あの…」

呼びかけると、席を立とうとしていた義勇は動きを止め、静かにこちらを振り返った。

「甘露寺さんの任務って、何日間くらいなんですか?」

「あぁ…」

義勇さんは少し間を置いてから、ぽつりと答えた。

「任務と言っても、伊黒との保養も兼ねているからな。二、三日くらいだと思うが」

「そう、なんですか…」

二、三日。それは、甘露寺さんが不在のこの屋敷で、義勇さんと過ごさねばならない時間を示していた。

無一郎くんとの関係に悩み、心が揺れている今、かつて慕った義勇さんとここで過ごすのは、どこか後ろめたいような息苦しさを伴う。

それに甘露寺さんが護衛を義勇さんがすることも無一郎くんに、内緒にしていると教えてくれた。

ますます後ろめたさが募る

「あの…義勇さんは、この屋敷の護衛に付きっきりで大丈夫なんですか? 他の任務とか…」

「鬼もまったく出なくなったしな。支障はない」

淡々と答える義勇の声に、かつての懐かしさが重なる。

けれどゆきはすぐに、無一郎の存在を思い出し、心の中で自制するように強く拳を握りしめた。

これ以上、義勇さんの優しさに甘えて、心をかき乱されるわけにはいかない。

「そうですか…」

私は小さく相槌を打ち、それ以上は何も言わずに視線を器へと戻した。

義勇さんはそんな私の硬い様子を静かに見つめながらも、急かすことなく、ただ黙ってそばに居る。

差し込む秋の光の中で、私たちの間には、かつてとは違う、どこか張り詰めた大人の距離感が出来てしまっていた…。

/ 1034ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp