第104章 護衛〜冨岡義勇【R強】
翌朝、窓から差し込む柔らかな光で目を覚ますと、外は雲ひとつない見事な秋晴れだった。
「義勇さん」
澄んだ青空とは裏腹に、私の心には昨夜の彼の切ない瞳がまだ色濃く焼き付いている。
胸のざわつきを振り払うように頭を振ると、気を取り直して着物に着替え、部屋を後にした。
朝食を摂るため、甘露寺さんの屋敷にある食堂へ向かった。
しかし、扉を開けたゆきの足はぴたりと止まった。
そこには、すでに義勇さんの姿があったからだ。
「あ…」
不意の遭遇に一瞬戸惑ったものの、逃げ出すわけにもいかない。
私は高鳴る鼓動を抑えながら、そっと彼の隣の席に腰を下ろした。
「…おはようございます、義勇さん」
「おはよう」
横目で見た義勇さんは、昨夜のあの締め付けられるような表情が嘘だったかのように、いつもと変わらない淡々とした様子だった。
少し拍子抜けしながらも、運ばれてきた朝食の膳に目を落とす。
その瞬間、ゆきの箸がぴたりと止まった。
…あ、茸…
小鉢の中に、私の大の苦手な茸。
どうしても箸が進まず、器を見つめたまま固まっていると、不意に隣からすっと箸が伸びてきた。
義勇さんは流れるような自然な所作で、ゆきの小鉢から茸をひょいとつまみ上げ、自分の器へと移したのだ。
「え…」
驚きに目を見張り、思わず義勇さんの顔を覗き込む。
義勇さんは表情ひとつ変えずに、黙々と箸を動かしていた。
私の苦手なもの…まだ、覚えていてくれたんだ…
継子だった頃、食事のたびにこうしてさりげなく助けてくれたことを思い出し、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「ありがとうございます」
気恥ずかしさから、俯きながら小さな声でお礼を伝えた。
頬を桜色に染め、消え入りそうな声で感謝を口にするゆきの姿を、義勇は視界の端で静かに見つめていた。
その愛らしさに、胸の奥がどうしようもないほど愛おしさで満たされていく…。
…やはり、可愛いな
願わくば、また昔のようにゆきと笑い合える日々に、あの愛おしい時に戻りたい。
こうして毎日、当たり前のように共に食事を摂り、同じ時間を静かに分け合いたい…。
そんな切なる願いを不器用な胸の内に秘めながら、義勇はただ、いつもより少しだけゆっくりと箸を進めた。
少しでもゆきの側に居たいから